102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.705
その“諦めのひと言”が脳を老けさせる──80代でも若い脳を保つ人の共通点④
シリーズ最終回
◇予想外こそ脳の栄養──“慌てる私”が前頭前野を鍛えている
私たちの脳には「ワーキングメモリ」と呼ばれる“脳のメモ帳”がある。 このメモ帳は最大でも3~4枚しかなく、同時に処理できる情報は限られている。
だからこそ、レジで「ポイントを使いますか?」「アプリをお持ちですか?」「QRコードを見せてください」と立て続けに言われると、頭が混乱し、最後には買ったものを忘れてしまう──そんな経験をするのは自然なことだ。
しかし、こうした場面で「次はこう言われるかも」と事前にイメージしておくことは、脳にとって非常に良いトレーニングになる。
レジに並んでいる間にスマホ画面を見ながら予習する行為は、前頭前野を刺激し、神経接続を強化する“リハーサル”になる。
脳は手慣れたことを繰り返しているだけでは鍛えられない。
むしろ、デジタル社会のように次々と新しい操作や判断を求められる環境こそ、脳の老化を防ぐ最高の舞台なのだ。
ただし、完璧に予測しすぎると、予想外の出来事に弱くなる。
脳は「想定外の刺激」に出会うと一瞬フリーズする性質があり、それを測るのが「ストループテスト」だ。
赤や青の文字はすぐに答えられても、緑という三文字になると混乱する──これは脳が「変な信号が来た」と受け取るためだ。 だからこそ、「違うことを言われても慌てず一呼吸おく」ことが、脳の柔軟性を保つ鍵になる。

年齢を重ねても、脳のネットワークは増やしていける。 「この年だからできなくてもしょうがない」という固定観念こそが、脳を老化させる最大の敵だ。 米国コロンビア大学の研究でも、年齢に対してポジティブな認識を持つ高齢者ほど記憶力が高く、ストレス反応も穏やかであることが確認されている(J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci. 2018 Aug 14;73(6):925-933.)。 脳は可塑性が高く、刺激を受けるたびに神経回路を書き換えることができる。 90歳を過ぎても脳トレは可能なのだ。
スーパーエイジャーたちは「もう無理」と決めつけず、音楽や新しい挑戦に向かって行動している。 その姿勢こそ、脳の若さを保つ秘訣。 私たちも「限界より少し上のことに挑戦する」気持ちを忘れずにいたい。 予想外のことに格闘する──それが、脳を鍛える最高の栄養になる。
完










































コメント