アルツハイマー病が回復する可能性が実験モデルで確認されました!
アルツハイマー病の病因は、脳内にアミロイドベータ(Aβ)が蓄積することで、神経細胞に異常が現れると考えられています。
最近、Aβの集合体がこれらの病態の引き金になることが判明していますが、引き起こされた神経細胞の障害が回復する可能性があるのかは明確な検証は行われていなかったのです。
今回、国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループが、ラット由来の神経細胞モデルを用いて検討し、Aβ集合体によって引き起こされる神経細胞の障害が、Aβ集合体を除去すると回復する可能性があることを初めて実証し報告しました。
研究グループは、ラットの胎児脳由来の神経細胞をAβ集合体で2日間処理した後、Aβ集合体処理を継続する細胞と、Aβ集合体を含まない培養液に交換しAβ集合体を除去する細胞に分け、さらに2日間培養しました。
その結果は以下の通りです。
・最初の2日間、Aβ集合体で処理された細胞では、無処理の細胞に比較し、アルツハイマー病発症につながるタウタンパク質の異常変化などが認められました。また、シナプスの形成・維持などに重要な役割を持つβカテニンの異常変化も観察されています。
・Aβ集合体の処理と除去に分けた2日間の実験では、Aβ集合体を処理を継続した細胞では、細胞死誘導性変化は増悪し、タウタンパク質やβカテニンの異常が持続しました。
一方、Aβ集合体を除去した細胞では、細胞死誘導性変化やタウタンパク質の異常が無処理の細胞と同程度まで回復し、βカテニン*の異常も部分的に回復したと報告しています。*(βカテニンは脳において、脳の神経細胞の伸長やシナプス形成など脳の形態形成に重要な働きをします) これらの結果から、Aβ集合体が主に細胞外から毒性作用を発揮し、その結果生じる細胞内の障害性変化は可逆的なものであること、また、Aβ集合体を除去することにより回復可が能なことが示唆されました。
今後研究が進むと、アルツハイマー病の病因を取り除けば、もとに回復できること可能性を示すもので、アルツハイマー病患者さんにとって朗報となる日も近いかもしれませんね。
国立精神・神経医療研究センターのプレスリリースはこちら☟
http://www.ncnp.go.jp/press/release.html?no=331
Tanokashira D, et al. Mol Brain. 2017;10:4.