くめちゃんのつぶやき脳No.435
102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座
◇クイズで学ぶ、コレステロールに関する問題
LDLコレステロールが高い人の卵の摂取量、制限はあるの?
【問題】
脂質異常症は、動脈硬化を引き起こす元凶の一つであり、放っておくと脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクが高くなることは周知の事実です。
脂質の中でも注意すべきは、LDLコレステロールなどの、いわゆる悪玉コレステロール。このLDLコレステロールに関する記述で正しいのは次のうちどれでしょう?
•(1)運動を実践すれば、LDLコレステロールは確実に下がる
•(2) LDLコレステロールが高い人は卵は週に1~2個に抑えるべき
•(3) LDLコレステロールは「少し高いほうがいい」「下げすぎても
良くない」
【解説】
LDLコレステロールについては誤解がいくつかあります。
健康長寿のためには、動脈硬化のもととなるLDLコレステロールのコントロールが欠かせません。
しかし、LDLコレステロールの数値を生活習慣の改善だけで下げるのは一筋縄ではいかないのが事実です。
中性脂肪のように、食べ過ぎやアルコールを抑えて運動すれば減りやすい、というわけではないからです。
そもそも、LDLコレステロールについては、誤解されていることが少なくありません。
よくある誤解の1つは、「運動を実践すれば、LDLコレステロールは確実に下がる」というものです。
「コレステロールは油の一種なのだから、運動して体脂肪が減れば下がりそう」と思う人がいても不思議ではありませんが、実際はそうではありません。
脂質異常症の専門家である千葉大学大学院医学研究院 横手幸太郎教授によれば、「中性脂肪やHDLコレステロールはジョギングやウォーキングなどの有酸素運動で改善しますが、LDLコレステロールはそれらに比べ運動では下がりにくいと。また、エネルギーとして使われる中性脂肪と違って、コレステロールは運動で消費されるわけではない」と述べています。
エネルギーとして使われる糖や中性脂肪と違って、コレステロールは細胞膜やホルモンの「材料」になるものです。
そもそも燃料ではないので、運動しても使われることはありません。
有酸素運動をすると中性脂肪は減りますが、LDLコレステロールは運動だけではなかなか減りません。
なお、運動だけでは「減りにくい」というだけで、運動が意味がないわけではありません。
減りにくいとはいえLDLコレステロールを下げる効果は多少なりともあるので、運動は推奨されています。
運動によって血糖値を下げるインスリンというホルモンの効き目が良くなり、血糖値や血圧が下がることで、LDLコレステロールも下がりやすくなるそうです。
「卵は1日に何個食べても大丈夫」というのも大きな誤解です。
昔は「卵は1日1個まで」などと言われましたが、あるときから「1日に何個食べても大丈夫」という情報が出回るようになり、今でも「何個食べてもいい」と思っている人は多いかもしれません。
確かに、コレステロールは7割以上が体内で合成されるので、食事の影響は意外と少ないのは事実です。さらに「日本人の食事摂取基準」でも2015年にコレステロールの上限値がなくなったこともあり(2020年版では「脂質異常症の重症化予防の目的からは、200 mg/日未満に留めることが望ましい」と記載されている。)、「コレステロールの制限は時代遅れ」と思っている人もいるでしょう。しかし、コレステロールの制限が必要ないのは、あくまで「健康な人の場合」です。LDLコレステロールが高い人は、体内のコレステロールのうち2~3割は食事から来ることを無視するべきではありません。
「LDLコレステロールが高い人がたくさんコレステロールをとれば、さらに上がる可能性があるので、とりすぎないほうがいい」と横手教授は述べてます。実際、「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版」でも高LDLコレステロール血症の人はコレステロールの摂取量を1日200mg未満に抑えることを推奨しています。
コレステロールは生命を維持するために必要不可欠な成分でもあるため、「数値が低すぎるのはよくない」「多少多くても問題ない」と思う人もいるようです。実際、ネット上の情報には、そういったことを示唆する情報もあります。しかし、これは誤解で、LDLコレステロール値が上がれば動脈硬化のリスクは増えるし、下がれば動脈硬化のリスクは減る。LDLコレステロールの量が問題になる病気は動脈硬化だけ。そして動脈硬化とLDLコレステロールの関係はいたってシンプルです。LDLコレステロールの値が低すぎると体に良くないというエビデンスもありません。
LDLコレステロールが低すぎると死亡率が高くなるというデータはあるものの、それはがんや肝硬変などの患者が混じっているためだそうです。
コレステロールはもともと体に必要なもの、したがって、がんの人や衰弱してやせ細った人はLDLコレステロールが低くなっています。
LDLコレステロールが低いから弱っているのではなく、弱っているからLDLコレステロールが低いという解釈です。
つまり、因果関係の逆転です。
少なくとも動脈硬化を防ぐためには、LDLコレステロールは低ければ低いほどいいとは、専門家の一致する意見。
ただし、気をつけなければいけないのは急に下がってきたとき。
薬を飲んでいるわけでもなく、食事も変えてもいないのに下がってきたという場合は、何か病気が隠れているのかもしれないと、横手教授は注意するように、そして、そんなときは早めに医療機関を受診するよう勧めています。
正解(正しい記述)は、(2)LDLコレステロールが高い人は卵は週に1~2個に抑えるべき です。
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