くめちゃんのつぶやき脳No.405
◇脳と腸の意外な関係 腸内細菌が認知症に影響する?①
8月27日に開催された「脳寿命を延ばす いまの状態を把握し、対策を考える ~脳と腸からはじめる認知症予防の可能性」と題するオンラインメディアセミナーのうち、前回の「認知症の予防は40代から! 脳の老化を防ぐ5つのポイントとは?」について紹介しました。引き続き今回は、脳と腸、腸内細菌に関する国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長の佐治直樹先生報告を2回に分けて紹介します。
近年、腸の不調が脳に影響を及ぼすことが注目され、腸内細菌のコントロールが認知症予防につながるのではと言われ始めています。
認知症は、軽度認知障害[MCI( Mild Cognitive Impairmentの略 )]の段階で食い止めることが大切ですが、今のところMCIの段階で使える有効な薬はないと、と佐治先生は話します。
認知症の危険因子には、年齢、遺伝子のように修正できない項目と、生活習慣など修正できる項目があります。
修正できる項目は40%で、そのうち5%は高血圧、肥満、飲酒、糖尿病など食事が関わるものです。
「認知症疾患診療ガイドライン2017」には認知症の防御因子として、適度な運動、余暇活動、社会的参加などとともに食事因子が挙げられているが、実際にはどんな食事がいいのか、どういう献立がいいのかなど、具体的にイメージしにくいという人も多いのではないでしょうか。
食べ物と脳の関係を解き明かすために、腸内細菌が注目されています。
食事は腸内環境に影響を与えます。腸内細菌やその代謝産物から、脳と腸が互いに影響を及ぼし合う関係(「脳腸相関」や「腸脳相関」と呼ばれる)を調べていけば、食事が認知症に与える影響も分かってくると佐治先生は述べています。
腸内細菌と脳の病気の関係については近年研究が進んでいる。
例えば2021年2月には有名な科学誌「nature」が、腸内細菌と様々な精神疾患との関係についての記事を掲載した。そのほかにも、アルツハイマー型認知症、多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中などが、腸内細菌と関係するのではという報告があるという( Lancet Neurol. 2020 Feb;19(2):179-194. )。
また、ヒトの脳腸相関については、様々な経路が想定されています。神経系活性経路や、免疫経路、内分泌の経路、代謝産物の経路などです。
食べ物が体内に入ると、腸内細菌が食物を代謝し、その結果、様々な代謝産物が発生する。例えば、腐敗産物であるインドールや、悪い菌を抑制する乳酸・酢酸などが代表的な代謝産物。
代謝産物が一つのカギになります。食事によって、代謝産物は変わります。食事はいろんな病気に関連していますが、認知症もやはり関係していると考えられます。
腸内細菌がつくり出す様々な代謝産物と認知症の関係を調査した結果(Saji N, et al. Sci Rep. 2020 May 18;10(1):8088.)では、腸内細菌のいくつかの代謝産物は、認知症と関係があることが分かったという。
中でも、アンモニア*1が認知症リスクとの関連が高く、乳酸は低いという結果が得られたという。
*1アンモニアは食物中のタンパク質が代謝されるときにできる有毒な物質。ただし健康な人では、肝臓の働きによってアンモニアは無毒化され、尿とともに体の外に排せつされる)。
また、別の研究では、認知症の人と認知症ではない人では、腸内細菌叢(さいきんそう)はタイプが異なることが分かった。認知症ではない人に比べて、認知症の人の腸内細菌叢には、種類の分からない菌が増えているという。
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