くめちゃんのつぶやき脳No.386
◇妊娠中にとる食物繊維が少ないと赤ちゃんは肥満に?①
食物繊維は腸を元気に、いわゆる「腸活」に不可欠な要素で、健康維持に重要な役割を果たすことはよく知られています。
その食物繊維を妊娠中にしっかり摂ることで、妊婦の健康だけではなく、生まれてくる赤ちゃんの臓器形成や肥満リスクを低下させる可能性が高いことが最近の研究で分かってきました。
これまで、肥満や生活習慣病などは生まれてからの食生活や運動習慣の影響ばかりが重視されてきましたが、最新の研究から、生まれる前からの母親の食生活が、子共の健康に大きな影響を与えているようです。
2回に分けて記事を紹介していきます。
この研究は、東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学部門の木村郁夫教授らと慶應義塾大学薬学部の長谷耕二教授らの研究チームによるもので動物実験の結果です。
実験では、妊娠したマウスを2グループに分け、一方には食物繊維の少ないエサを、もう一方には水溶性食物繊維イヌリンを10%加えたエサ(高食物繊維食)を与えて飼育し、その後、生まれた子どもマウスは両グループとも離乳後高脂肪食で飼育した。
すると、食物繊維の少ないエサを与えた母親から生まれた子どもマウスは成長するにつれて肥満になったが、食物繊維を多く含むエサをとっていた母親から生まれた子どもマウスは、明らかに肥満が抑えられたという結果になった。
興味深いことに、「腸内細菌を持たない無菌状態の妊娠マウスに食物繊維を多く含むエサを与えても、生まれた子どもは低食物繊維食の母親から生まれた子と同じように重度の肥満になったという。
つまり、子どもの成長の仕方や将来の体形に、母親の腸内細菌が関与するということを研究者の木村教授は語っています。
食物繊維を多く与えた母親マウスの腸内では、食物繊維を腸内細菌が分解して増える短鎖脂肪酸という物質が増加していた。
そこで、その関連性を調べるため、無菌マウスや低食物繊維食の妊娠マウスのエサに短鎖脂肪酸の一種であるプロピオン酸という成分を加えたところ、生まれてきた子どもは、高脂肪食を食べ続けても肥満が抑制されたという。
これは、腸内細菌が食物繊維を食べて作り出す短鎖脂肪酸が、子どもの肥満の抑制に関わっていることを示しているといえる。
木村教授らは、母親の作る短鎖脂肪酸はどのように子どもに影響を与えているのかを確認するためお腹の中にいる胎児を調べた。
その結果、胎児の時点で既に腸や交感神経、膵臓などの臓器に、短鎖脂肪酸のセンサー(受容体)が多く存在することが確認されたという。
胎児の臓器や神経に短鎖脂肪酸の受容体が多く存在しているということは、その子のエネルギー代謝を整えるという意味で極めて重要な意味を持ちます。
胎児は基本的に腸内細菌は存在しないし、お腹の中では食事もとらない。
おそらく、母親の腸内で作られた短鎖脂肪酸、または何らかのシグナルを血液や胎盤を介して胎児が感知するために、胎児期においても既に短鎖脂肪酸の受容体が存在しているのではないか、木村教授は示唆している。
つづく
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