くめちゃんのつぶやき脳No.377
◇ウォーキングと筋トレ、高血圧の人に有効な運動はどっち?
クイズで学ぶ運動と高血圧
【問題】高血圧の人が血圧を下げるカギの一つは、血管を広げる作用がある「一酸化窒素(NO エヌオー)」という成分を血管内で増やすことです。それには運動が効果的とされていますが、NOを増やす効果がより高いのは有酸素運動と無酸素運動のどちらでしょう。
•(1)ウォーキングやジョギングなどの「有酸素運動」
•(2)筋トレなどの「無酸素運動」
さて、みなさまの判断はどちらかな?
血圧を下げるためには、まず「食事で塩分を控えること」だとだれでも思うところ。確かに減塩は高血圧を改善する上で要となる対策です。しかし、運動、なかでもウォーキングやジョギングなどの「有酸素運動」をすれば、「血圧リセットの救世主ともいえる成分」を体の中で増やすことができることが判明しています。
その血圧リセット成分とは、「一酸化窒素(NO エヌオー)」です。
NOには血管を広げる作用があるため、血管の中でたくさん作れば、血圧を下げることにつながるのです。
一酸化窒素(以下NO)は、窒素酸化物の一種。高温で窒素と酸素が化合することで大気中でも生じます、体内では、血管の内側にある内皮細胞という膜のような細胞から分泌されます。大気中のNOは大気汚染の原因となる「悪者」のイメージが強いが、血管で産生されるNOは、「血管を柔らかくする」という重要な役割を担っているのです。
血管の内皮細胞からのNOの産生が増えると、血管が柔らかくなって広がり、伸び縮みしやすくなります。すると血流がスムーズになり、血圧を正常値に戻そうとする作用が生まれ、血圧も下がるのです。
しかし、NOの産生量は加齢とともに減っていきます。20代のNO産生量を100%とすると、40代あたりで半減し、さらに70代、80代には80%以上も落ちるようです。
NOが産生されなくなると、動脈硬化が進んで血管が硬くなり、血流量に合わせて伸縮する力がなくなります。年をとると、それまで血圧に問題がなかった人でも自然と血圧が高くなっていくのには、このNOの減少も大きく影響しています。
そこで、見直されているのが運動です。中高年になってもNOを増やすことはできることが分かっています。
NOを作るには、血液が血管内を流れるときに生じる、内皮細胞の表面をずりずりとこするような刺激(「ずり応力」という)が必要なことが分かっています。
ですから、運動をして血流を良くすることが重要となるわけです。
運動にはウォーキングやジョギングなどの「有酸素運動」と、筋トレなどの「無酸素運動」の大きく2種類がありますが、このうちNOを増やす効果がより高いのは有酸素運動です。
高血圧の人が有酸素運動を習慣化したとき、最高血圧が8.3mmHg、最低血圧が5.2mmHgも下がったと報告されている(J Am Heart Assoc. 2013 Feb 1; 2(1):e004473.)
筋トレなどの無酸素運動ではNOを増やすという観点からは、有酸素運動には及びません。
ただし、加齢によって心身が虚弱状態に陥る「フレイル」や、筋肉量が減って筋力が低下する「サルコペニア」が問題になっている現在、中高年にとっては筋肉をつけることも大事なテーマであることは変わりません。
血圧を上げ過ぎず、なおかつ、ほどよく筋肉もつけるために適切な運動とはどんなものでしょうか。
それは、軽く息が上がる程度の有酸素運動を20秒ほど続け、休憩を20秒、さらに、左右交互に太ももを腰の高さまで上げる「もも上げ」のような軽い無酸素運動を20秒取り入れ、それを数回繰り返すサーキットトレーニングのような運動が推奨されています。
今まで筋トレを優先していた人も、血圧のことを気にするなら、有酸素運動の割合を多めにしてみることがお勧めです。
コロナ禍における外出控えなどで運動不足になりがち。運動不足が続くと、エネルギー過多のために内臓脂肪がたまり、交感神経を刺激するホルモンが分泌され、血圧が上がっていきます。それも、運動不足では全身の血流が増えず、NOも産生されにくいため、血圧は上昇する一方となる。
テレワークによる運動不足を解消するなら、とりあえず通勤にかかっていたのと同じ時間、体を動かしてみてはどうでしょうか。
テレワークの開始前と終了後、ウォーキングやジョギングを毎日取り入れれば、それだけでかなり運動不足は解消できるはずです。
わたしも、NOを増やすことを意識して実践していますが、お蔭様で血圧はいつも正常範囲を維持できています。
Comments