くめちゃんのつぶやき脳No.370
◇オートファジーは老化とも関わりが深い②
細胞内のオートファジーの存在は50年以上前からわかっていいましたが、働きが不明で長い間ほとんど注目されていませんでした。しかし、ノーベル賞を受賞した大隅良典さん(東京工業大学特任教授)が1990年代初頭に、専門の酵母でオートファジーに必要な遺伝子を見つけたことで一気に注目を集め、さらに吉森教授らが人間にも同じ仕組みがあることを解明し、世界中で研究が加速した分野です。
オートファジーの機能は加齢とともに低下することから、最近、オートファジーは老化とも関わりが深いことが明らかになってきました。
特に吉森教授が発見した「ルビコン」と呼ばれるたんぱく質が老化と深くかかわっていることがの分かってきました。
これまで、オートファジーを促進するたんぱく質はいくつも見つかっていたが、新たに発見された「ルビコン」は逆にオートファジーのブレーキ役を果たすというものです。
しかも、これが加齢とともに増えることから、オートファジーも低下することが判明してきました。
そこで、この老化に深いかかわりのあるルビコンの動きを抑えたら老化は止まらないだろうか。
夢のような話ですが、実は動物実験では証明されているのです。
その実験とは、遺伝子操作でルビコンの働きを抑えた線虫で実施したところ、オートファジーの活性化が維持され、寿命が平均20%延びたという驚くべき結果が得られています。
さらに、寿命が延びただけでなく、老いても活発に動き続けたということです。
吉森教授らの実験では通常の線虫の2倍は動いたとのこと。これは、80歳の人間がフルマラソンを涼しい顔で走るようなものだそうです。
すごいことです!!
また、ルビコンの働きを抑えることで加齢に伴ってかかりやすい病気を防ぐことも解明されつつあります。
多くの病気で、オートファジーが低下すると病態が悪化するとわかってきたからです。
人類の永遠の夢である「不老不死」はともかく、少なくとも健康寿命は延ばせるのではないかと期待が膨らんでいます。
具体的な例では、脂肪肝では、ルビコンを働かないようにすることで、オートファジーが機能して脂肪の分解が進み、肝臓内での脂肪蓄積を防ぐ可能性が大きくなってきています。
吉森教授が高脂肪食を与えたマウスの肝細胞で実験したところ、脂肪肝ではルビコンが増えていることを発見。
一方、ルビコンの遺伝子を破壊したマウスに高脂肪食を食べさせ続けても、脂肪肝にならなかったとのこと。
また、アルツハイマー病など神経変性疾患にもオートファジーの機能低下との関係が指摘されています。
神経細胞は他の細胞と違って分裂しません。まさに一生もので涯使います。
新しい細胞に入れ替わらないため、細胞の中の掃除役オートファジーの働きが特に重要となります。
老化によって、オートファジーが働かなくなると、異常なたんぱく質などが蓄積され、これが神経細胞を壊すので、結果的に、アルツハイマー病やパーキンソン病といった病気が誘発される可能性が高まります。
実際、遺伝子操作で脳にオートファジー機能がないマウスをつくったところ、すべてがアルツハイマー病に似た症状をしめしたという。
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