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くめちゃんのつぶやき脳No.308

◇腸のエネルギー源になり、免疫力を高める「グルタミン」

新型コロナウイルスの感染拡大により、今年の夏は、手洗いや手指の消毒、マスクの着用、「三密」の回避などの予防策が求められ、例年とは違った難しい過ごし方を余儀なくされました。


厳しい暑さに加えてそうした生活が続く中で、体力が落ちて夏バテしたり、疲れやストレスがたまったりしている人も多いのではないでしょうか。


 体力の低下や疲労・ストレスの蓄積は、病気から体を守る免疫力の低下につながります。まして、コロナ禍にあっては、免疫力を高めておくことが大切です。


 免疫の中心的な役割を担うリンパ球の約6割は、小腸に集中しています。したがって、免疫力をアップするには、十分な睡眠や適度な運動に加えて、腸内環境を整えて腸の免疫を高めることが重要になってきます。


 そこで今回は、腸のエネルギー源となり、免疫細胞の強化を促す「グルタミン」について紹介します。


以前、食物繊維は腸のエネルギー源として欠かせないものだとお伝えしました。それは、食物繊維の一部が腸内の善玉菌によって分解されて、短鎖脂肪酸が産生されるからです。

 短鎖脂肪酸の一種である酪酸は、大腸の一番のエネルギー源となり、小腸でも2番目のエネルギー源となります。


 善玉菌が食物繊維を分解して、短鎖脂肪酸が産生される一連の仕組みを「腸内発酵」といいます。この腸内発酵を促す食物繊維は発酵性食物繊維と呼ばれています。


 食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がありますが、酪酸を産生しやすいのは水溶性食物繊維です。そのため、水溶性食物繊維のことを指して発酵性食物繊維と呼ぶこともあります。


 発酵性食物繊維は、全粒小麦や小麦ブラン(ふすま)、大麦、もち麦といった穀類や、こんぶやわかめなどの海藻類、ごぼうなどの根菜類、キウイフルーツなどの果物からとることができます。


大腸の一番のエネルギー源は酪酸ですが、小腸の一番のエネルギー源となるのが、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種である「グルタミン」です。グルタミンは、大腸でも酪酸に次ぐ2番目のエネルギー源で、腸管全体では最大のエネルギー源といえます。


ちなみに、体全体の主なエネルギー源は、糖質が分解されたブドウ糖です。

しかし、腸管のエネルギー源としては、ブドウ糖は5~7%程度しか使われていないんです。


 グルタミンは体内でも生成可能な非必須アミノ酸で、筋肉などに貯蔵されています。健康な状態のときは、あえてグルタミンを意識的に摂取する必要はありません。ただ、激しい運動やストレス、風邪などで体に負荷がかかったときには、小腸の免疫機能が働くために、グルタミンが大量に消費されます。そうなると、体内で合成される量では足りなくなってしまうので、食事での摂取が必要になります。そのため、条件によっては必須アミノ酸となる準必須アミノ酸と呼ばれることもあります。


 食事からたんぱく質として摂取したグルタミンは、小腸で吸収されて、免疫機能が集中する小腸粘膜細胞でエネルギー源として使われます。また、大腸でも、粘膜上皮が円滑に働くエネルギー源となり、バリア機能を増強します。


腸管のエネルギー源となる以外にも、グルタミンには大事な働きがあります。それは、免疫細胞の発育と増強を促して、免疫力を高めることです。

 グルタミンは、体外から侵入した病原菌などを攻撃して無害化するリンパ球やマクロファージなどが成長し、増殖するための栄養分となるのです。また、病原菌(抗原)を攻撃するIgA抗体の量を保つことも分かっています。

 グルタミンと免疫細胞の関係を発見したのは、英オックスフォード大学のエリック・ニュースホルム博士です。博士はグルタミンの濃度が異なる環境では、リンパ球とマクロファージの働きがどう違うかを研究。その結果、グルタミンの濃度が低い環境では、リンパ球は正常に分裂せず、マクロファージの働きが低下することが分かりました。一方、グルタミンの濃度が高い環境では、リンパ球が活発に細胞分裂をして増殖し始め、マクロファージの働きも活性化したと報告しています。

 マラソンのランナーは競技終了後に風邪を引きやすいといわれますが、これは過度の運動によって、体内で必要とされるグルタミンの生成量が追いつかずに、免疫力が低下した影響だと考えられます。そのため、ランナーの中には、競技終了後にグルタミンのサプリメントをとる人もいるようです。


 グルタミンの多くは筋肉から作られるので、毎日の食事でたんぱく質をしっかりとることが大切です。体内のグルタミンの量=血液中のグルタミンの濃度を維持することが、腸管の免疫機能を高めることにつながります。

グルタミンは肉類、魚類、卵などに多く含まれていますが、熱に弱く、40度以上で加熱すると変性してしまいます。ですから、生か生に近い状態でとるようにします。

 例えば、魚なら刺し身やたたき、カルパッチョ、肉ならレアの牛ステーキ、卵かけごはん(ごはんは少し冷ましておく)などでとるといいでしょう。また、細かく刻んだマグロなどと卵を合わせてユッケ風にするのも、グルタミンが豊富にとれてお勧めです。



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