102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.629
- 竹内久米司
- 5月2日
- 読了時間: 4分
脳の老化を予防すると考えられる食品は?
クイズで学ぶ脳と食
【問題】日本人の食生活を対象とした長期的な疫学研究により、特定の食品や栄養成分が認知機能の維持に有益である可能性が指摘されています。
その中で該当しないものは次のうちどれでしょう?.
•(1)乳製品
•(2)緑茶
•(3)うどん
•(4)大豆製品
•(5)DHA(青魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸)
【解説】
脳の老化を防ぐために役立つと考えられる食品は何でしょうか?
近年の研究によれば、日々の食事が脳の老化に大きく影響することがわかってきました。
国立長寿医療研究センターが1997年から行っている長期的な疫学研究「NILS-LSA」(*)では、特定の食品や栄養が認知機能の低下リスクに関係していることが明らかになっています。
(*NILS-LSA:NILS-LSA(National Institute for Longevity Sciences - Longitudinal Study of Aging): 国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究。日本人の老化の過程を明らかにすること、老化・老年病の発症要因や予防策を見出すことを目的に、1997年から実施されている。)
例えば、牛乳などの乳製品について。女性の場合、乳製品を1日に128g多く摂ると、認知機能の低下リスクが20%減ることがわかっています。
「乳製品にはカルシウム、ビタミンA、B2、B12、良質なたんぱく質、脂質などが豊富に含まれており、非常に栄養価の高い食品です。特に短鎖脂肪酸は、発酵食品や牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品に含まれており、この短鎖脂肪酸の摂取量が多いと認知機能低下のリスクが低くなることが、『NILS-LSA』の研究で明らかになっています」と、研究部部長の大塚礼氏は説明しています。
「NILS-LSA」という長期的な研究では、緑茶が認知機能の低下を防ぐ可能性があることがわかりました。
60歳以上の人たちを対象に12年間のデータを分析したところ、緑茶を1日に2杯以上飲む人は、1日1杯未満しか飲まない人に比べて認知機能の低下リスクが約30%低いことが明らかになりました。
さらに、大豆製品も同様の効果があるとされています。大豆や豆腐、納豆などを1日に約80.5g(豆腐4分の1丁程度)以上食べている人は、44g未満しか食べない人に比べて認知機能低下リスクが77%低くなるという結果が得られています。
また、サンマ、サバ、マグロなどの青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)も重要です。60歳以上で血液中のDHA濃度が中程度以上の人は、濃度が最も低い人に比べて、10年後に認知機能が低下するリスクが約80〜90%も低いことが示されています。

「NILS-LSA」という研究では、穀類の摂取量と認知機能の低下リスクの関係が調べられました。
その結果、穀類を多く食べるほど認知機能が低下する可能性があることが判明しました。
ただし、日本人が主食とする米については、認知機能との関係が見られませんでした。
一方で、うどんやそうめんなどの麺類を多く食べることが、認知機能低下に強い影響を与えることが分かりました。麺類が単品で食べられることが多く、副菜(おかず)や食材が少ない食事となりがちな背景が、影響している可能性があると考えられています。
この研究ではさらに、食品摂取の多様性が認知機能に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。食品摂取の多様性を評価した結果、食べる種類が少ないグループの認知機能低下リスクが、種類を多く摂取しているグループと比較して約40%も高いことが分かりました。これは、単品の食事では必要な栄養素が不足しがちであるため、認知機能に悪影響を及ぼす可能性があるという仮説に基づいています。
また、多様性の高い食事は、身体だけでなく脳の健康にも良い効果を与えることが研究で示されています。例えば、さまざまな野菜、タンパク質を含む食品、発酵食品、そして青魚などをバランス良く摂取することで、認知機能低下のリスクを減らすことが期待できます。この結果から、脳の老化を防ぐためには、食品の種類を増やし、多様な栄養素を摂取することが鍵であると結論付けられています。
「いろいろな食品を食べて、バランス良く栄養を摂取しましょう」というメッセージは、いまさらと新鮮味に欠けるものかもしれませんね。しかし、私がセミナーで何回も「からだは原則で動いている! 奇跡はない!」と伝えてきました。ですので、私は聞き古したことこそ、普遍的で重要なことを伝えていると考えています。皆さんにも今一度、そうした視点で日々の食事の大切さを見直していただけたらと思います。
【正解】
(3)うどん
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