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102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.634

  • 執筆者の写真: 竹内久米司
    竹内久米司
  • 6月6日
  • 読了時間: 4分

◇旅と自然は脳を覚醒させるか?驚きの科学的メリットとは


【問題】休み日には騒がしい都会を離れ、自然を求めて旅行を予定している人も多いと思います。そういった旅や自然環境と脳との関係について、間違った認識は次のうちどれでしょう?

(1)自然の中では脳の注意力が回復する

(2)森の中には、気持ちを静める働きがあるとされる物質が放出されている

(3)自然の風景の写真を見るだけでは脳は活性化しない

(4)都会に住むことは生涯を通じて人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある


【解説」

旅は、まさに日常を飛び出し、未知の世界へと踏み込む特別な体験です。

いつもとは違う環境に身を置くことで、脳は新たな刺激を受け、活性化されていきます。旅行の計画を立てることから始まり、準備をして、いざ非日常空間へ・・・そんな一連の流れが脳にどのような影響を与えるのでしょうか。


脳科学的栄養学の視点で考えると、自然の中を歩いたり、自然の風景の写真を見たりするだけでも脳が活性化することが明らかになっています。

確かに、森の中を散策すると気持ちがスッキリしたり、海の風景を眺めると心が落ち着いたりしますよね。こうした自然の刺激は、脳の働きを高め、集中力や発想力を向上させる効果があるのです。

旅に出ることで、脳にフレッシュな空気を送り込む・・・そんな感覚を味わってみませんか?新しい場所を訪れ、自然に触れることで、脳も心も活性化されるはずです!


2008年、ミシガン大学の研究者であるバーマン氏は「注意回復仮説ART:Attention Restoration Theory)」という概念を発表しました(Psychol Sci. 2008 Dec;19(12):1207-12.)。この理論によると、自然の中に身を置くと脳の注意力が回復するというのです。


実際、バーマン氏らの研究では、森や湖の風景を眺めたり、自然の中を歩いたりすることで、ワーキングメモリ(情報を一時的に記憶し、それを組み合わせて何らかの結果を導き出す力)や注意力が向上することが確認されました。これに対し、都市環境の中では同様の脳の活性化効果は得られなかったとのこと。

都会の喧騒に疲れたとき、自然の中で過ごす時間が脳をリセットし、集中力や発想力を取り戻す鍵になるかもしれませんね。思考をクリアにしたいときは、ちょっとした森林散策や湖畔のひとときを楽しんでみるのも良さそうです。


脳の研究においては「副交感神経が優位になると注意力が回復する」という説明のされ方も比較的多いので、「自然に触れるとリラックスし、脳も休まるとは言えるでしょう





森林浴は、ただ森の中を歩くだけで心が落ち着き、ストレスが和らぐと言われていますが、実は科学的な裏付けもあるのです。「森林療法」として研究が進められており、森の木々が放出するフィトンチッドという揮発成分(テルペン類が主成分)が、人間の心身にポジティブな影響を与えることが分かってきています。

植物は外敵から身を守るためにフィトンチッドを放出しますが、それが人間にも作用し、リラックス効果やストレス軽減につながる可能性があるのです。特に、松由来のフィトンチッドはGABA(γ-アミノ酪酸)を活性化させ、不安を和らげたり睡眠の質を向上させたりする効果があると、2020年の米国の研究で示されていますExp Neurobiol. 2020 Apr 30;29(2):120-129.)。また、2021年の韓国の研究では、消化器の炎症を抑える抗炎症作用があることも分かってきています(Molecules. 2021 Mar 26;26(7):1895.)。

森の中に身を置くだけで、ストレスから解放され、心が落ち着く感覚が得られるのは、こうした科学的な作用が関係しているのかもしれませんね。都会の喧騒に疲れたときは、ぜひ森林浴を試してみるのも良さそうです!


都市に暮らしていると、通勤ラッシュや人混み、騒音など、知らず知らずのうちにストレスを受けることが多いですよね。実際、都市環境そのものが脳に影響を及ぼしている可能性があることが、科学的な研究で示されています。

2011年にドイツの研究者が発表した研究では、被験者が計算課題に取り組んでいる最中に、ヘッドフォンから「あなたは不合格だと思いますよ」などの否定的な言葉を聞かせたり、イライラした表情の実験者をモニターに映し出したりすることで、脳活動を調査しました。その結果、**不快な情動に関わる「扁桃体」が活性化し、その調節を助ける「帯状皮質」**の反応が強まることが確認されました(Nature,2011  474, 7352)

特に、都市部に住んでいる人は扁桃体の活動が強く、都会育ちの人は帯状皮質の反応が顕著だったのに対し、田舎で暮らしている人や田舎育ちの人では、このような特徴的な脳反応は見られませんでした。つまり、都市環境は生涯を通じてストレスのリスク要因になりうるという示唆が得られたのです。

日々のストレスを軽減するために、時々自然の中で過ごしたり、リラックスできる環境を見つけたりすることが、都市生活における心のケアにつながるかもしれませんね。都会の喧騒を離れて、一息つく時間を意識的に取り入れてみるのも良さそうです。


「正解」

間違っている説明は(3)自然の風景の写真を見るだけでは脳は活性化しない です。

 
 
 

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