くめちゃんのつぶやき脳No.258 論文拾い読み ◇認知症を予防する血管を若く保つ7つの方法
循環器の健康状態が良好な高齢者ほど、認知症の発症リスクが低く、認知機能の低下の速度が遅いことが、フランスの疫学研究で示されましたので、要旨を紹介します。
中年期の生活習慣病(高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病)は、脳卒中、心筋梗塞に代表される循環器疾患だけでなく、認知機能の低下にも関係することが知られています。
したがって、循環器疾患の予防を心がければ、認知症のリスクも下がることが期待できます。
フランス国立保健医学研究所(INSERM)の研究者らにより、「循環器疾患を予防する7つの方法(Life’s Simple 7)」の達成度と、認知症の発症や認知機能の低下との関係性について調べた結果です。
循環器疾患を予防する7つの方法(Life’s Simple 7)とは下記の4つの生活習慣と3つの検査値からなる。
(1)タバコを吸わない
(2)適切な体重の維持
(3)活発な運動
(4)健康に良い食事
(5)コレステロール値の管理
(6)血圧の管理
(7)血糖値の管理
これら7項目のうち、最適な状態にある項目数が多いほど、血管系の健康状態が良好で、死亡、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)のリスクが低いことが確認されています。
分析では、これら7項目の達成レベルを表に示すように項目ごとに3段階に分けて、それぞれのポイントの合計を循環器健康全般スコア(0~14ポイント)としています)。対象は、フランスのボルドー、ディジョン、モンペリエに住む、調査開始時点で循環器疾患または認知症ではなかった約9300人の高齢者です。
結果は
循環器系が健康な人ほど認知症発症リスクは低いとの結論
「Life’s Simple 7」で最適なレベル(2ポイント)に達している項目の数が、0または1項目の人の、100人-年当たりの認知症罹患率は1.76でした。2項目の人ではそれより0.26低く、3項目では0.59、4項目では0.43、5項目は0.93、6または7項目の人は0.96低くなっていました。
最適なレベルに該当する項目数が1つ増加するごとに、認知症発症リスクは10%低下していました。
続いて、循環器健康全般スコアと認知症発症の関係を調べたところ、同様の結果が得られました。
スコアが1ポイント上昇するごとに、認知症発症リスクは8%低下していました。
さらに、循環器系が健康な人ほど、全般認知機能スコアの経時的な低下は小さい(認知機能の低下速度が遅い)こともわかりました。
これらの結果は、循環器系の健康を高めるために生活改善をはかれば、認知機能の低下と認知症発症も予防できる可能性を示唆しています。
原著論文はこちら
Samieri C, et al. JAMA. 2018 Aug 21;320(7):657-664. doi: 10.1001/jama.2018.11499.