くめちゃんのつぶやき脳 No.192 ◇大豆は長期的に心疾患リスクを低減する!?
米食品医薬品局(FDA)は近々、「大豆は心疾患リスクの低減に有用」とする長年にわたって認めてきた健康表示(ヘルスクレーム)を取り消す可能性があるとみられている。
しかし、トロント大学(カナダ)内科教授のDavid Jenkinsらはこのほど、メタ解析から、大豆は長期的に心臓の健康に有用とする説を支持する結果が得られたことを報告。
FDAは1999年、「大豆は心疾患リスクを低減する可能性がある」とする健康表示を初めて承認した。
しかし、2017年10月には「大豆たんぱく質の摂取と心疾患リスク低減の関連については、専門家の間で合意に至っていると判断していたが、それを支持するエビデンスが得られなかった」として、健康表示の取り消しを検討していることを発表。
この夏には最終的なFDAの見解が発表されるものとみられている。
こうした中、Jenkinsらは今回、FDAが主張を見直す根拠とした46件のランダム化比較試験を対象に、“累積メタアナリシス”という手法で解析した。
その結果、大豆の摂取量が多い人ではLDL-コレステロール値と総コレステロール値の低下が認められ、このような効果は46試験の全てで確認された。同氏らは、これらの試験データは、大豆が心血管の健康に有用とする主張を裏付ける根拠となるものだとしている。
共同研究者の同大学栄養科学教授のJohn Sievenpiperは、大豆が心血管に与える効果はそれほど大きなものではなく、コレステロール値を平均で5%低下させる程度であると強調。
その上で、「他の植物性食品と一緒に摂取すればその効果は増大する」としている。 また、Sievenpiperは「今回のレビューで一貫性が示されたことは重要だ」と、また、研究データのレビューの中には、小規模な臨床試験の解析で高い有効性が示されても、サンプルサイズが大きくなり、研究の精度が高まると有効性が低下するものもあるという。その一例として、魚油の有効性に関する解析結果を挙げているが、「大豆に関しては結果が変わることはなかった」と説明している。
この新たなデータについて、栄養学の専門家からはさまざまな意見が寄せられている。
米ノースウェル・ヘルスの管理栄養士であるMichelle Milgrimは「大豆には心臓の健康状態をわずかに改善する効果がある可能性がある」とした上で、「健康的な食事の一部として大豆たんぱく質を取り入れるとよいだろう。
ただ、心疾患リスクを低下させるには、運動や禁煙、ストレスの軽減、適正体重の維持、定期的な医療機関の受診なども考慮すべきかもしれない」と話す。
一方、栄養学者のKatrina Hartogは、解析対象とした試験の中には、高温状態の食品に大豆粉を混ぜて摂取した場合の効果を調べたものが含まれているなど、今回の研究にはいくつかの限界点があることを指摘。
大豆たんぱく質は高温になると構造が変化し、その効果が減弱する可能性があるとしている。
その上で、「健康表示の有無にかかわらず、赤肉や高脂質の食品の代わりに大豆製品からたんぱく質を摂取することは、全般的に心血管に良い影響を与えるものと考えられる」と述べている。
Jenkinsもこの意見に同意し、「FDAが大豆の健康表示を取り消せば、植物性たんぱく質を見直す流れが押し戻されてしまうのでは」と懸念を示している。
コメント
昔から大豆を常食する日本や東南アジア諸国では、欧米諸国に比べると心疾患や乳がんの発生リスクは低いとされてきた。
その理由の一つに大豆食の効果があげられている。
食がからだをつくってきているという事実から考えれば、伝統的な食文化が健康に寄与してきていることは否定できないところです。
FDAが46件のランダム化比較試験の結果から、大豆の心疾患リスクの低減効果を認められなかったとすることだが、このランダム比較試験というのは医薬品の有効成分の効果を効率よく短期的に精度高く確認していく方法。食品の栄養効果は他の食品や運動などの因子も加わって効果を発揮するものが多く、単体として試験しても効果は明確に得られにくいということがあります。大豆は心疾患に効果がないと結論するのは性急すぎます。今後のさららなる研究が必要であろうと思われます。
原著論文はこちら
Jenkins DJA, et al. J Am Heart Assoc. 2019 Jun 27. [Epub ahead of print]