くめちゃんのつぶやき脳 No.165 ◇英国で食品中の砂糖20%削減へ、 関連疾患は抑制されるか?
2017年3月、英国政府は、食品製造および小売業界との協働で、シリアルや菓子類など特定の食品群の砂糖含有量を2020年までに20%削減する計画を発表。
イングランド公衆衛生庁(Public Health England)は、砂糖摂取目標を1日摂取カロリーの5%までとすることで摂取カロリーを11%削減し、これによって年間砂糖関連死を4,700件減らし、医療費を年間5億7,600万ポンド抑制するモデルとして打ち出した。
今回、同国オックスフォード大学のBen Amies-Cullらによる、砂糖減量計画の潜在的な健康上の有益性について予測評価を行いその結果を報告しているので紹介します。
砂糖減量計画の肥満、疾病負担、医療費への影響を検討
研究グループは、英国政府による砂糖減量計画が子供および成人の肥満、成人の疾病負担、医療費に及ぼす影響の予測を目的にモデル化研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 全国食事栄養調査の2012~13年度と2013~14年度におけるイングランドの食品消費と栄養素含有量データを用いてシミュレーションを行い、砂糖減量計画によって達成される体重およびBMIの潜在的な変化を予測するシナリオをモデル化した。 シナリオ分析は、個々の製品に含まれる砂糖の量の20%削減(低砂糖含有量製品へ組成を変更または販売の重点の転換[砂糖含有量の多い製品から少ない製品へ])または製品の1人前分量の20%削減について行った。
イングランドに居住する4~80歳の全国食事栄養調査対象者1,508例のデータを用いた。
主要アウトカムは、子供と成人の摂取カロリー、体重、BMIの変化とした。成人では、質調整生存年および医療費への影響などの評価を行った。 10年で、糖尿病が15万4,550例減少、総医療費は2億8,580万ポンド削減
砂糖減量計画が完全に達成され、予定された砂糖の減量がもたらされた場合、1日摂取カロリーは、4~10歳で25kcal低下し、11~18歳も同じく25kcal、19~80歳では19kcal低下すると推定された。
介入の前後で、体重は4~10歳で女児が0.26kg、男児は0.28kg減少し、これによってBMIはそれぞれ0.17、0.18低下すると予測された。
同様に、11~18歳の体重は女児が0.25kg、男児は0.31kg減少し、BMIはそれぞれ0.10、0.11低下した。また、19~80歳の体重は女性が1.77kg、男性は1.51kg減少し、BMIは0.67、0.51低下した。 全体の肥満者の割合は、ベースラインと比較して、4~10歳で5.5%減少し、11~18歳で2.2%、19~80歳では5.5%減少すると予測された。 質調整生存年については、10年間に、女性と男性、合わせて5万1,729例の改善が得られると推算された。 疾患別質調整生存年改善への影響は、糖尿病が圧倒的に大きく、10年間に女性で8万9,571例、男性で6万4,979例、合計15万4,550例が減少すると予測された。また、10年で大腸がんが5,793例、肝硬変が5,602例、心血管疾患は3,511例減少するが、肺がんと胃がんの患者はわずかに増加した。総医療費は、10年間に2億8,580万ポンド削減されると推定された。 3つの砂糖減量アプローチ(製品組成の変更、1人前分量の削減、販売の重点の転換)のうち、1つで摂取カロリー削減に成功しなかった場合、疾病予防への影響が減衰し、健康上の有益性が容易に失われる可能性が示唆された。
著者は、「英国政府による砂糖減量計画では、砂糖の量および1人前の分量の削減が、摂食パターンや製品組成に予期せぬ変化をもたらさない限り、肥満および肥満関連疾患の負担の軽減が可能と考えられる」としている。
糖の甘みは、脳がブドウ糖を主要なエネルギー源としている以上むやみに削減することは難しいことです。
問題は脳が必要とする分のブドウ糖が血中に常時維持されていることが大切なことです。
しかし現代食事情では、糖の摂りすぎにより脳が必要とする分より過剰なブドウ糖が血中に供給されている状況が一番の問題点です。
要は、1日の必要エネルギー量摂取のうち糖の摂取を比率を見直すことです。
こうした報告が出るたびに、個々の食習慣を見直す機会として捉えていきましょう。
原著論文はこちら
Amies-Cull B, et al. BMJ. 2019;365:l1417.