くめちゃんのつぶやき脳 No.101 ◇機能性表示食品制度で注目集めるEPA②
80年代に入ってから、千葉大学医学部附属病院のチームが、国内の漁村部と農村部で「血液粘度」の違いを調べた。
粘度が高い血液は俗にいうドロドロ。
流れにくく、詰まりやすいため、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなる。
調査の結果、農村と漁村ではEPAの摂取量がそれぞれ1日0.9gと2.7gで3倍の差がありました。
血液粘度に加えて、虚血性心疾患や脳血管疾患の死亡率にも違いがあり、明らかに漁村のほうが低いことが判明。
つまり魚を食べる機会が多く、EPAをたくさん摂っているほうが血液サラサラで、心筋梗塞や脳卒中を起こしにくいということがうかがえる結果が出たわけ。
これを裏付けるように、農村部の人たちに魚油をのませると血液粘度が下がったという。
その後、EPAが血液中の中性脂肪を下げ、血小板が固まるのを抑えることも確認された。
赤血球、血小板、中性脂肪と、EPAはさまざまなところで働いて粘度を下げ、血液をサラサラにするというわけ。
20世紀末にはEPAを主成分とした「中性脂肪を下げる医薬品」も発売されています。
最近ではEPAの新たな機能性を探る研究も始まっている。
EPAが「運動時の持久力を高める」というもの。
日本水産が順天堂大学の駅伝選手たちに、1日1.6gのEPAを含むサプリメントをのんでもらったところ、4ヵ月後、EPAをのまなかった選手たちの1万メートル走のタイムが平均5秒短縮したのに対し、EPAをのんだ選手たちはなんと51秒も短縮したという。
その理由はやはり赤血球を柔らかくすることと推測されている。
血行が良くなった結果、全身の細胞に効率よく酸素が運ばれたのだろう、ということだ。
そんなEPA、前述した通り青魚に多く含まれるが、日本人の魚の摂取量は年々減り続けている。
かつては肉より魚の摂取量が多かったのに、2009年以降は逆転してしまいました。
一方、厚生労働省の人口動態調査によると、「心疾患の死亡数」は1980年に12万3505人だったのが2010年は18万9360人と、30年で1.5倍に増えている。
もしかすると、魚の摂取量が減っていることも関係しているのかも。
厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」では、EPAとDHAを合わせて1日1g以上摂ることを推奨している。
できれば1日3食のうち、1食は魚を食べるようにしてほしいところ。
毎日の食事で摂るのは自信がないという人は、サプリメントを上手に利用するのも選択肢。
なお、EPAは脳神経細胞の重要な構成成分ですので、一時「魚を食べると頭が良くなる」とさかんに宣伝されましたが、外から摂ったEPAが脳実質に届くのかということに関しては、現在まで、科学的なエビデンスは明らかになっていません。