くめちゃんのつぶやき脳 No.73 ◇EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか?
米国・オークランド小児病院のRhonda P. Patrickらによれば、注意欠陥・多動症、双極性障害、統合失調症などセロトニンが関与している脳機能障害患者では、ビタミンDおよび魚由来のω-3脂肪酸すなわちエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)のレベルがいずれも不十分であること。
また、これらを適切に摂取することで脳機能障害の悪化を抑制・調節できる可能性があると報告していますので紹介します。
セロトニンは多岐にわたる脳機能と働きに関わっている。
本報告では、セロトニンが実行機能、感覚ゲーティングおよび社会行動を制御していること、そして注意欠陥・多動症、双極性障害、統合失調症、衝動的行動のすべてにおいて、これら脳機能の欠陥が共通して認められるというこれまでの知見を総括している。
報告の概要はまとめると以下のとおり。
・これらの脳障害において、ω-3脂肪酸とビタミンDの補給が認知機能と
行動を改善する理由はいまだ解明されていない。
・ビタミンDおよび2つの魚由来ω-3脂肪酸すなわちEPAとDHAによる、
脳内のセロトニン合成や放出そして脳機能の調節メカニズムを提示する。
・脳内セロトニンは、ビタミンDホルモンにより転写活性化される酵素、
トリプトファンヒドロキシラーゼ2を介してトリプトファンから合成され る。
・脳障害患者では、ビタミンD(集団の~70%にみられる)レベルおよびω-3 脂肪酸レベルが不十分という所見が共通して認められ、これは脳内セロトニ ンの合成が最適でないことを示唆している。
・著者らは、プロスタグランジンE2の減少に伴いEPAがシナプス前ニューロン からのセロトニン放出の増加を促し、シナプス後ニューロンにおける細胞膜 透過性増大に伴いDHAがセロトニン受容体活性に影響を与えるというメカニ ズムを提唱した。
このシステムの可能性は、私が公開講座の中ですでに提唱してこたところで、今回正しさが証明されたことになりました。
・発症の重要な過程においてビタミンD、EPA、DHAが不十分であることは、 遺伝因子とも相まって、セロトニン活性および機能の障害へとつながり、神 経精神疾患やうつ病の発症機序に寄与している可能性があった。
・ビタミンDと魚由来のω-3脂肪酸を適切に摂取することが脳機能障害の悪化 を抑制・調節する可能性を示していた。
原著論文はこちら
Patrick RP, et al. FASEB J. 2015 Feb 24. [Epub ahead of print]