102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.530
「脳の老化」を防ぐ可能性のある食品は?
◇クイズで学ぶ「食事と脳の老化」に関する問題
【問題】日本人の食生活を長期間追跡した疫学研究で、いくつかの食品や栄養成分が認知機能の維持に役立つ可能性が示されています。
それらに当てはまらないものは、次のうちどれでしょう?
•(1)乳製品
•(2)緑茶
•(3)うどん
•(4)大豆製品
•(5)DHA(青魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸)
脳の老化予防に役立つ可能性のある食品とは?
人の精神活動を司る脳の老化には、日々の食事が深く関わっていることが近年明らかになってきました。国立長寿医療研究センターが1997年から実施している長期的な疫学研究「NILS-LSA」(*1)では、いくつかの食品や栄養成分が認知機能の低下リスクと関係することが判明しています。
*1 NILS-LSA(National Institute for Longevity Sciences - Longitudinal Study of Aging): 国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究。日本人の老化の過程を明らかにすること、老化・老年病の発症要因や予防策を見出すことを目的に、1997年から実施されている。
例えば、牛乳などの乳製品。女性のデータで、乳製品の1日の摂取量が128g増えると、認知機能低下リスクは20%低下していました。「牛乳を含む乳製品にはカルシウムやビタミンA、ビタミンB2やB12、良質なたんぱく質、脂質が多く含まれ、栄養価の高い食品といえます。
特に、短鎖脂肪酸が含まれている食品は、発酵食品のほか、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品に限られます。「NILS-LSA」ではこの短鎖脂肪酸の摂取量が多いと、認知機能の低下リスクが下がることも分かっています。
「NILS-LSA」では、緑茶も認知機能の低下と関係していました。「60歳以上の人の12年間のデータを分析したところ、緑茶を飲む頻度が1日1杯未満の人たちに比べ、1日に2杯以上飲む人たちでは、認知機能の低下リスクが約30%低くなっていました」(大塚氏)。また、大豆や豆腐、納豆などの大豆製品についても、1日に80.5g(豆腐4分の1丁程度)以上とっている人は、44g未満の人に比べて認知機能低下リスクが77%低いという結果が得られました。
サンマ、サバ、マグロなどの青魚の脂質に多く含まれている、多価不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)の血中濃度が高い人も、認知機能が維持されていました。60歳以上で血液中のDHA濃度が中程度以上の人たちは、DHA濃度が最も低い人たちに比べて、10年後に認知機能が低下しているリスクが約80~90%も低くなっていました。
カギとなるのは「食事の多様性」
一方で、認知機能にマイナスに働く可能性のある食品も分かりました。
「NILS-LSA」では、女性のデータで穀類の摂取量が多いほど認知機能低下のリスクが高まることが示されました。
ただし、穀類の種類別に見ていくと、日本人が主食とする米の摂取量と認知機能に関連は見られず、
うどんやそうめんといった麺類の摂取量の多さが、認知機能の低下により強く影響していることが分かったといいます。
麺類のメニューは単品で食べることが多く、使われる食材や副菜も少なくなりがちです。
そうした背景が影響しているのではないかと考え、国立長寿医療研究センターでは、副菜(おかず)の少ない食事が認知機能の低下につながるという仮説を立てて、食事の多様性に着目した研究を進めた。
その結果、食品摂取の多様性が最も低いグループに比べて、最も高いグループでは、認知機能の低下リスクが約40%も減少していることが分かったのです。
つまり、脳の老化を防ぐカギとなるのは「食事の多様性」であることが明らかになりました。
「いろいろな食品を食べて、バランス良く栄養を摂取しましょう」というメッセージは、新鮮味に欠けるものかもしれません。
しかし、私は聞き古したことこそ、普遍的で重要なことを伝えていると考えています。
皆さんにも今一度、そうした視点で日々の食事の大切さを見直してみませんか。
*1 NILS-LSA(National Institute for Longevity Sciences - Longitudinal Study of Aging): 国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究。日本人の老化の過程を明らかにすること、老化・老年病の発症要因や予防策を見出すことを目的に、1997年から実施されている。
【正解】
(3)うどん
댓글