くめちゃんのつぶやき脳No.408
◇認知機能に関連する臨床試験
8月27日に開催された「脳寿命を延ばす いまの状態を把握し、対策を考える ~脳と腸からはじめる認知症予防の可能性」と題するオンラインメディアセミナーのうち、前回、森永乳業株式会社研究本部基礎研究の清水金忠所長のビフィズス菌の特徴と認知機能の関係についての最新研究報告を紹介しましたが、今回はその続きです。
ビフィズス菌に注目し、認知機能を改善するものがないかをモデル動物で研究したたところ、ビフィズス菌MCC1274株が有望と分かり、ヒトによる臨床試験が行われました。
予備試験として、軽度認知機能障害(MCI)を疑われる高齢者にビフィズス菌MCC1274を含むカプセルを24週間摂取してもらった。
すると、摂取8週後、16週後、24週後に認知機能のスコアが改善されたという結果が。
そこで本試験では、プラセボ(偽薬)を対照とした二重盲検臨床試験を行った。
50歳以上、80歳未満のMCIと疑われる方80名に、MCC1274株またはプラセボを含むカプセルを16週間摂取してもらい、摂取前後の認知機能を評価した。
試験の結果、MCC1274株を摂取したグループでは、「アーバンス(RBANS)」(*2)という神経心理テストで、即時記憶(今聞いた電話番号や人の名前などの記憶)、視空間・構成(車の運転や物の整理など空間的な関係を把握する能力)、遅延記憶(一定時間経過後に思い出す能力)のスコアが、摂取前と比較して大幅に改善された。これらはプラセボ群と比較しても有意に改善されたといい、また、アーバンスの総合スコアも認知機能の改善が認められたとのこと。
*2 アーバンス(RBANS)は、認知機能の低下を手軽に数量化することを目的に米国で開発された神経心理学検査の一つ。1998年に開発された。
また、簡易認知機能スケールである「あたまの健康チェック(JMCIS)」においても同様に、プラセボと比較して有意な認知機能の改善が認められ、アルツハイマー病の国際学術誌に報告されました( Xiao et al.,Journal of Alzheimer's Disease, 2020 )。
さらに、この結果は、国際的なアルツハイマー病の情報サイトALZFORUMで紹介されるなど、大きな注目を集めています。
これまでのところ、MCIの疑いのある人に使用できる薬は存在せず、はっきりとした効果が証明されたサプリメントもないとのこと。
今回のセミナー記事では、脳と腸が互いに影響を及ぼし合う関係を中心に紹介してきたが、今後、さらに研究が進めば、食べる物によって認知機能改善やMCIに対処できるようになるかもしれない。そんな日が来ることを期待したい。
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