102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.638
- 竹内久米司
- 13 分前
- 読了時間: 4分
◇あなたも騙されるかも!? 詐欺師が狙う脳のクセ
クイズで学ぶ「詐欺と脳の仕組み」
【問題】
ちまたに横行する「特殊詐欺」。人が特殊詐欺でだまされるときの説明で、
以下のうち間違ったものはどれ?
•(1)特殊詐欺は、人の脳の仕組みを利用した犯罪である
•(2)ストレスフルな情報で、思考できなくするのが常套手段だ
•(3)高齢になるほど引っかかりやすいのは脳の機能低下が関係している
•(4)特殊詐欺では、相手の不安をあおる手法が唯一使われる手口だ
【解説】
「どうして疑わなかったの?」と思う一方で、「もし自分がその場にいたら…」と不安を感じる。
特殊詐欺は、誰もが陥る可能性がある罠です。
公立諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授(脳科学)はこう指摘しています。
「高齢かどうかに関係なく、人間の脳は、複数のことを同時に処理するのが苦手」
だからこそ、詐欺師は巧妙に情報を操作し、焦りや混乱を生み出して正常な判断を奪うのだ。
つまり、年齢を問わず、詐欺の手口にかかる危険性は誰にでもある——
あなたも例外ではないのです。
◎脳の「メモ帳」を使い切る罠——詐欺師はここを狙う!
人間の知性を司る「前頭前野」は、状況に応じて記憶や情報を呼び出し、最適な判断を導き出します。しかし、これはコンピューターのキャッシュメモリのようなもので、処理できる容量には限界があいます。
脳科学者・篠原菊紀教授(公立諏訪東京理科大学)はこれを「脳のメモ帳」と呼び、こう説明しています。「このメモ帳には、誰もが3~4枚しか持っていません。『あれ』『これ』『それ』くらいしか同時に処理できないのです」
ここに目をつけたのが詐欺師。
「ある人がこう言い、次に別の人がこう言う…」と、次々に情報を押し込むことで、脳のメモ帳を使い切らせ、判断力を鈍らせる——まさに知能を逆手に取った巧妙な手口です。十分に気をつけたいですね。
◎「脳のメモ帳」が埋まると、思考は停止する——詐欺師はそこを狙う!
失恋をしたとき、人は悲しみ・後悔・喪失感に支配され、仕事が手につかなくなる。これは、脳の「メモ帳」の大半が感情に占領されてしまうためなのです。
この仕組みを利用するのが詐欺師。「ストレスフルな情報を次々と浴びせ、人を次々と登場させる」——こうして脳に圧をかけてきます。
すると、高齢者であろうとなかろうと、脳のメモ帳はすぐに埋まり、普段通りに思考できなくなってしまう。結果、正常な判断力を奪われ、詐欺の罠にかかりやすくなります。
だからこそ、圧をかけられたときこそ、**「少し時間を置く」「他人の視点を入れる」**のが大切。脳を守る知恵ですね。
◎高齢者ほど騙されやすい理由——脳のメモ帳の限界
ワーキングメモリの力は18〜25歳をピークに低下していきます。だから高齢になるほど狙われやすく、だます側からすると、落としやすいターゲットなのです。
さらに、詐欺の手口には「不安を煽る」だけでなく、「嬉しいことと組み合わせる」巧妙な方法もあります。たとえば、
•還付金詐欺:「過払い金があったのでお金が戻ります」
•ロマンス詐欺:ネット上で疑似恋愛を演出し、お金を要求する
こうした手口が成功する理由は、ポジティブな情報も脳のメモ帳を消費するからです。
心理学では、うつ的になりやすいイベントとして、つらい出来事だけでなく、昇進などのプラスの出来事もプレッシャーになることが知られています。
つまり、脳のキャパシティを超えたとき——それが「詐欺に陥る瞬間」なのかもしれない。 注意したいですね。
◎「ワーキングメモリの限界」——詐欺だけじゃない、日常にも潜む落とし穴
詐欺師は、「不安をあおる」だけでなく、「うれしい知らせ」を使っても人を騙せる。
なぜなら、ワーキングメモリは感情の種類を問わず消費されるからだ。
そして、この現象は詐欺に限らず、日常のあらゆる場面でも起こっている。
•約束が3つ、4つ重なると、最初の予定がすっぽり抜け落ちる
•2階に上がったものの、「あれ?何しに来たんだっけ…」と目的を忘れる
•会話中に素晴らしいアイデアを思いついたのに、話し出した瞬間に内容が飛んでしまう
これはまさに、脳のメモ帳が使い切られた状態。
ワーキングメモリのキャパシティは、詐欺の被害だけでなく、日常生活にも影響を及ぼします。
だからこそ、「情報を整理する習慣」や「一息つく時間」が大切なのかもしれませんね。
正解(間違っている説明)は、(4)特殊詐欺では、相手の不安をあおる手法が唯一使われる手口だ です。

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