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くめちゃんのつぶやき脳No.402

◇3歳までに確立される腸内フローラ

 赤ちゃんの腸内細菌はお母さんからもらう


腸内細菌について本格的な研究が注目されるようになってからの歴史はまだ浅い。それは、実際に腸のなかにどんな菌がいるのかを調べるのはそう簡単なことではなかったからです。


腸内細菌の多くは「偏性嫌気性菌」という酸素が嫌いな菌のため、通常の空気がある環境では培養ができません。

その嫌気性菌の培養を可能にしたのが“日本の細菌学の父”と呼ばれる北里柴三郎博士です。


 その後、日本の腸内細菌研究の礎を築いたのは東京大学名誉教授の光岡知足先生です。

光岡先生は、当時、赤ちゃんにしかいないと思われていたビフィズス菌が大人の腸内にもいることを発見し、腸内細菌の構成(細菌叢 フローラ)に加齢変化があることを発見しました。この研究は、現在の健康長寿研究につながっています。


また、良く知られる「善玉」「悪玉」と腸内細菌を分類したのも光岡先生です。

さらに、今のようにゲノム解析で詳細なことがわかる以前から、腸内細菌の変化が健康を左右すること、いい腸内細菌を維持するためには、食事や運動が必要だということを提唱してきました

現在、世界中で行われている腸内細菌と病気との関係を突き止める研究は、そういったことを最先端技術で確認し直しているにすぎないとも言われています。


さて、健康に長生きするための“いい腸内細菌”を手に入れるにはどうしたらいいのだろうか。それにはまず、私たちの腸内細菌がどこから来るのか知っておく必要があります。

腸内細菌の集合体のことを腸内フローラ(または腸内細菌叢)といいます。

それぞれの腸内細菌の数も種類も分布も、一人ひとり異なります。


その菌のバランスを決めるうえで最も重要となるのは、お母さんなのです。


 生まれる前のお腹の中にいる赤ちゃんは無菌状態にありますが、出産時に産道や膣でお母さんから細菌を分けてもらいます。そうすることで、一から腸内フローラを作り上げていくのではなく、これから生活していく環境に適した腸内フローラのタネを簡単に入手することができるのです。


ただし、お母さんの腸内フローラが乱れていると、その乱れた腸内細菌が赤ちゃんのベースとなってしまう可能性があります。

一方、産道を通らず帝王切開で生まれた赤ちゃんは、お母さんから受け取る菌が少ないため、腸内細菌が少なく免疫機能も脆弱だということがわかっています。


そのため、出産直後にビフィズス菌などをのませることで、いい腸内細菌が増えるようにコントロールするような取り組みも行われています。


昨年、フィンランドのヘルシンキ大学などが行った研究があります。

帝王切開出生児に対し、カプセルに入れたお母さんの便をミルクに混ぜて投与することで、いい結果を導けたという論文を発表しています。つまり、お母さんから赤ちゃんへの糞便移植です。


 便の移植なんて汚いと思うかもしれませんが、動物ではよくあることです。

牛や馬、マウスやコアラなども、生まれたばかりの子どもはお母さんのフンを食べることがあります。そうすることで、自分たちのエサや環境に適した腸内細菌を手に入れることができます。


誰に教えられることなく、本能で生きていくために必要な菌を受け継いでいるのです。


 お腹にいる間のお母さんの栄養状態や、生まれてから3年ほどの間の母乳や生活環境も、どういう腸内細菌が常在菌として定着するかを決定づけるのに重要だということです。


この期間に常在菌になっておかないと、後からいくらお腹にいい菌をとっても、定着させることはできないのです。その人の腸内フローラのベースは、子どものころに決まってしまう。健康とは年をとってから気にするものではなく、お腹の中にいるときから考えるべきなのかもしれません。ちなみに、赤ちゃんが何でもかんでも口に入れてペロペロとなめてしまうのも、何が敵で何が味方になるかを、この時期にお腹に覚えさせておくためではないかとも考えられています。


 では、大人になってから、お腹にいい乳酸菌やビフィズス菌、食物繊維をとっても意味がないのだろうか。

そんなことはありません。

ヨーグルトやサプリメントでいい菌をとっている間はそれなりの影響はあります。

また、毎日の食事で十分な食物繊維をとるようにすることで、その人の腸内フローラの中で、有用な菌を増やすことができると考えられています。


 手っ取り早く悪い菌を排除して、いい菌だけを増やせばいいと思うかもしれないが、腸内フローラは、多くの菌によって構成される一つのコミュニティで、菌と菌はお互いに影響を与え合っています。その中から、増えすぎると悪影響を及ぼすような菌を排除してしまうと、残った菌の中からまた悪さをするものが出てきてしまう。


いい菌だけを選ぶのではなく、腸内細菌全体でいいバランスを保つことが重要なのです。そのためには、菌の数だけでなく種類も多いほうがいいことがわかってきました。腸内細菌もヒトと同様、多様性が大事というわけです。


 一方、腸内細菌バランスに悪影響を与える要因には、わかっているだけでも抗生物質や過剰なストレス、砂糖や塩、動物性の飽和脂肪酸のとりすぎなどがあるという。


健康で長生きしたいのであれば、こういった因子をできるだけ減らすこと。運動や十分な睡眠も重要です。食物繊維もしっかりとりましょう。日本人の腸内細菌にはもともと、食物繊維を分解する菌が多く、毎日の食事で十分に食物繊維をとることが重要になるのです。




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