くめちゃんのつぶやき脳No.358
◇全粒穀物とアンチエイジングの最新研究が続々と②
・全粒穀物は食物繊維、抗酸化物質が除去されず豊富
前回、解説したように全粒穀物が幅広い疾患リスクを抑制する効果を持っているのはなぜなのだろうか?
その理由としてまず考えられるのが、豊富に含まれる食物繊維の効果です。
これに加え、外皮に含まれるポリフェノール類などの抗酸化物質、亜鉛やマグネシウムなどのミネラルをまんべんなく摂れるということにあります。
全粒穀物は主食として日常的に摂ることになるのでその効果は大きいということになります。
ここで、改めて全粒穀物とはなにかを確認しておきましょう。
全粒穀物とは、外皮や胚芽をまるごと食することができる穀物のことです。
白米やいわゆる白パンは、精白よって外皮や胚芽を取り除かれるため、外皮や胚芽に含まれる豊富な食物繊維やポリフェノール、ミネラルなどの栄養成分が取り除かれてしまいます(図)。
スーパーや食品売り場に行ってみると、いまや沢山の種類の全粒穀物の商品が売られています。
米食では玄米、発芽玄米、大麦*、それに「五穀米」などとしてパッケージされている黒米、赤米、そば、きび、あわ、ひえなども全粒穀物だ。パン食なら、小麦の外皮や胚乳ごと粉にした全粒粉パン、外皮のふすまを含むブランパン、ライ麦パン。
シリアルでは、オールブランや玄米シリアル、オーツ麦(オートミール)など様々です。
私もいろいろ試してみましたが、味も食感もさまざま、全粒穀物には幅広い選択肢がありますので、気に入ったものを探してみることをお勧めします。
*麦ご飯用の大麦は、外皮が除かれているため厳密には全粒穀物ではないが、食物繊維量は全粒大麦とほぼ同じです。
そもそも、食物繊維はその含有量だけでなく、食物繊維の質が大事です。
全粒穀物の食物繊維はその「質の良さ」にあります。
食物繊維はご承知の通り2種類に分けられます。
まず、水に溶けない「不溶性食物繊維」は、水を吸ってふくらみ、お通じのかさとなったり腸の動きを促して便秘改善に働きます。
一方、水に溶ける「水溶性食物繊維」は水に溶けてねばねばと粘性を持つ特徴があります。野菜ではゴボウやチコリ、海藻類など、限られた食材にしか含まれないが、大麦やオーツ麦には水溶性食物繊維「β-グルカン」が豊富です。
「β-グルカンは、食物繊維の中でも別格の働きを持ちます」(青江教授)。
β-グルカンは、一緒にとった食品と混じり合いながら胃や小腸をゆっくりと通過していきます。
このため、胃で膨らんで満腹感を高め、糖や脂質の吸収スピードを緩めて血糖値の急上昇を抑えたり、血中コレステロールを下げるといった働きが確認されている。
このように、これまで、全粒穀物の機能性は、大きく2つに分けられてきた。
ところが近年、不溶性食物繊維のこれまでのお通じ改善、腸のお掃除やさんという概念を改める新たな発見がありました。
それは、腸内発酵の解析技術の進歩で、全粒小麦に豊富な不溶性食物繊維であるアラビノキシランが腸内で溶出して水溶性の性質を発揮するという発見です。そして、腸内でさかんに発酵することがわかってきました。
つまり、不溶性食物繊維も、その種類によっては腸内で発酵するという新たな発見です。
これからは、“発酵性食物繊維”という切り口で食物繊維を見ていく必要があると、穀物の機能性に詳しい大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授は述べています。
さらに、腸内で腸内の有用菌がこれら発酵性食物繊維をエサにすると、短鎖脂肪酸という物質を生み出す。
この短鎖脂肪酸には、満腹感を高めて肥満を抑制する、血糖値の急上昇を抑える、血圧を下げる、免疫機能に好影響を与えるなど、幅広い機能が見いだされてきていることを指摘しています。
つまり、前回紹介した全粒穀物の摂取量が多いほどさまざまな病気を予防できるのは、腸内で発酵が起こることが関係していると考えられるのです。
全粒穀物のエビデンスを踏まえ、米国では毎日最低3サービング分(90g)の全粒穀物食品を摂取し、1日に食べる穀物の少なくとも半分以上を全粒穀物にすることを食事ガイドラインで推奨(2015-2020年版 米国人のための食事ガイドライン)。また、オーストラリア、カナダ、英国を含めたEU諸国、シンガポールなどの各国も、全粒穀物食の摂取を積極的に推奨している。
Comments