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くめちゃんのつぶやき脳No.276 微生物が生きている発酵食品、ヨーグルトと納豆の魅力

◇微生物が生きている発酵食品、ヨーグルトと納豆の魅力

このところ発酵食品ブームが続いています。ヨーグルト、納豆、塩麹(しおこうじ)、甘酒、漬物、味噌、酢……と発酵食品は多種多様。「体によさそう」なイメージはあるが、何にどんな健康効果があるのかについては、はっきり整理できていない人も意外と多いのでは。そこで、今回は発酵食品の専門家である東京農業大学小泉幸道名誉教授のレポートより紹介します。

◇生きた菌を生食できるヨーグルトと納豆

発酵食品の健康効果といえば、整腸作用を思い浮かべる人が多いだろう。例えば、「ヨーグルトの乳酸菌は、生きて腸まで届き善玉菌として働く。だから、腸内環境が良くなる」ということはイメージしやすい。

 しかし、生きた微生物(細菌、カビ、酵母など)が含まれている発酵食品は意外に少ないことを知っているだろうか。

例えば、酢は酒に酢酸菌を加えて発酵させたものですが、最後に加熱処理を行うため、出来上がりには酢酸菌は含まれません。また、パンは酵母が発酵するときに排出する炭酸ガスを利用して生地を膨らませますが、焼くと酵母は死んでしまいます。

 つまり、製造工程では微生物が生きていても、製品となった段階では死んでいる場合が多いのだ。味噌のように製造工程で加熱処理をしないものもあるが、調理の段階で加熱すると麹菌や乳酸菌、酵母は死んでしまう。つまり、グツグツ煮た味噌汁には生きた微生物は含まれていない。

生きた微生物を腸に入れる」という観点で整腸作用が期待できる発酵食品は限られる。それは、ヨーグルトと納豆だという(ぬか漬けやキムチなどの漬物からも生きた微生物はとれるが、確実性が高く、効率よくとれるのはこの2つだという)。

 ヨーグルトは牛乳に乳酸菌を、納豆は大豆に納豆菌を加えて発酵させたものだが、どちらも短時間で急激に菌数を増やし、長期間発酵、熟成させずに出荷する。そして、生で食べる。つまり、この2つの発酵食品は、生きた菌を菌数がピークの状態で口にすることができるレアケースなのだという。

もっとも、菌が死んでいるからといって、健康効果が期待できないわけではない。そもそも発酵とは、米が麹菌や酵母の働きで日本酒になるように、もとの食品が微生物(細菌、カビ、酵母など)の作用で別のものに変化することをいいます。

 つまり、発酵食品は本来、「微生物が生きているかどうか」というよりも、「微生物が何を作り出すか」という点に着目して作られたものだといえる。

たとえ微生物が死んでいても、微生物が作り出したものに健康効果があるものも多い。それは、整腸作用に限らない。

◇発酵食品の特色は「風味」「栄養」「保存性」

発酵には、細菌が働くもの、カビが働くもの、酵母が働くものがある。これらが複数重なってできるものも少なくない(下図)。

また、微生物は関わっていないが、魚介類の内臓に含まれるたんぱく質分解酵素やアミラーゼ、リパーゼなどの酵素が作用してできる発酵食品もあります。代表的なものは塩辛やアンチョビです。

微生物は自分が生きていくために食品の成分をエサとして食べ、違うものを放出します。この微生物の“排せつ物”が人間にとって有益な場合が「発酵」、有害な場合が「腐敗」です。

例えば、ブドウを放置すると腐敗してしまいますが、ブドウに酵母が繁殖すると、酵母がブドウの糖を食べてアルコールや二酸化炭素、また、香りを生み出し、ワインになります。

 ワインには「ブドウにはない独特の風味」があり、「ブドウよりもポリフェノールが多い」。また、「ブドウよりも保存性が高くなっている」。この3つが発酵食品の特色。

発酵食品の特色

・独特の風味が生まれる

・栄養価が高まる

・保存性が高まる

発酵食品が体にいいのは、発酵によって元の食品にはない栄養素が生まれたり、栄養素の量が増えたり、栄養素が吸収されやすい形になったりするからだ。

◇「健康効果」より「風味」「保存性」が勝るものも

しかし、こういった栄養面のメリットが少なく、「風味」や「保存性」の点が勝っているものもあるため、全ての発酵食品に高い健康効果が期待できるわけではありません。

 例えば、発酵食品のなかには塩分が多いものもあるため、「体にいいから」ととり過ぎると高血圧や腎疾患などの原因になることがある。

 また、甘酒は元の米に比べると驚くほど栄養成分が高まっているため、栄養補給に役立つ。しかし、高エネルギーで、糖が吸収されやすい形で含まれているため、とり過ぎると血糖値を急激に上げてしまったり、肥満の原因になることもある。

 つまり、発酵食品は「流行っているからとやみくもにとるのではなく、自分に合ったものを選んで、適量をとること」が重要です。

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