くめちゃんのつぶやき脳No.260 ◇交通量の多い道路でのウオーキングは 心肺機能に悪影響を!
健康維持のためウーキングを日課にしている方は多くおられます。
しかし、ウオーキングのコースを選ばないとかえって健康を害するかもしれないという気になる報告です。
現在コロナウィルスの感染拡大が深刻化してきていますが、それと同じか、それ以上に深刻なのは近年の大気汚染の問題があります。
特に地球の工業地帯と表現される急激な発展を遂げてきた中国における大気汚染は地球環境破壊につながる深刻な状況になってきています。
これまでにも、大気中の汚染微粒子状物質への暴露による健康被害、特に冠動脈疾患への影響に関する多くの報告があります1,2)。
今回は英国国立心臓・肺研究所のRudy Sinharay氏らにより、大気汚染による健康被害に警鐘を鳴らす、高齢者に的を絞った時宜を反映した興味深い論文3)の要旨を紹介します。
研究は60歳以上の慢性閉そく性肺疾患や虚血性心身疾患の患者さんと健康ボランティアで12カ月以上の禁煙継続中の被験者でクロスオーバー試験にて実施。
被験者はロンドン中心部の商業地域(オックスフォード・ストリート:大気高汚染地域)と都市公園内(ハイドパーク:大気低汚染地域)の2群に無作為に振り分け2時間ずつ同様のウォーキングを実施。黒色炭素、微小および超微小粒子状物質、二酸化窒素を測定した。
結果は、商業地域の大気高汚染地域でウオーキングした慢性閉そく性肺疾患患者では咳が2倍、喘鳴が4倍に増加。
大気高汚染地域では、黒色炭素、二酸化窒素、PM10、 PM2.5、超微粒子らの濃度は低汚染地域に比べいずれも高値を示していた。
疾患の有無を問わず被験者全員で大気高汚染地域よりも低汚染地域のウォーキングで肺機能(1秒量、努力肺活量)の改善が認められていた。
一方、大気高汚染地域のウォーキングでは慢性閉そく性肺疾患患者で1秒量、努力肺活量の増加がともに低汚染地域と比べ低下した。
報告結果から大気汚染の影響は病人に限らず、健康人にさえ健康被害をもたらすことを明らかにしている。
いうまでもないことだが地球の大気汚染問題は真剣に取り組まなければ人類存亡の危機につながりかねない大問題であり、私が提唱している「経皮毒」の視点とも同じくする問題ではあります。
大気汚染や環境化学物質を誕生させてきた人類の責任において地球環境改善と、環境化学物質の生産規制や、個人では使用を控える具体的な行動が求めらている。
他人ごとではなく自身の問題として、コロナ感染拡大のこの時期にあらためて気づいていく時なのではないでしょうか。
1)Cesaroni G, et al. BMJ. 2014;348:f7412.
2)Brook RD, et al. Circulation. 2010;121:2331-2378.
3)Peacock JL, et al. Thorax. 2011;66:591-596.