くめちゃんのつぶやき脳No.261 ◇認知症発症に及ぼすライフスタイルと遺伝的リスクの関係
認識機能障害および認知症のない高齢者において、問題のあるライフスタイルと、高い遺伝的リスクの両方が重なると、認知症発症リスクは増加することは認められています。
しかし、生活様式の改善によってこのリスクをどの程度減弱できるかはこれまで明らかになっていなかった。
この点に関して、英国・エクセター大学の検討によって、同じ認知症の遺伝的リスクが高い集団であっても、好ましいライフスタイルを送る群では発症リスクが低くなることが明かにされました。
検討結果の概要
・遺伝的リスクを問わず、健康的な生活様式は認知症リスク
を低減
19万6,383例(平均年齢64.1歳、女性52.7%)が解析に含まれた。観察人年は154万5,433人年(フォローアップ期間中央値8.0年)で、この間に1,769例が認知症を発症した。 生活様式は、「好ましい」が68.1%、「中間的」が23.6%、「好ましくない」が8.2%であった。遺伝的リスクは、高リスクが20%、中リスクが60%、低リスクが20%だった。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、1.23%が認知症を発症し、これは低リスク集団の発症率0.63%と比較して有意に高かった。また、中リスク集団も、低リスク集団に比べ認知症リスクが有意に高かった。 生活様式が好ましくない参加者のうち、1.16%が認知症を発症し、好ましい集団の発症率0.82%に比べ有意に高かった。中間的集団も、好ましい集団に比し認知症リスクが有意に高かった。
・遺伝的リスクが高い集団では生活様式が好ましい群は
認知症リスクが低い
遺伝的リスクが高リスクかつ生活様式が好ましくない参加者のうち、1.78%が認知症を発症し、低リスクかつ生活様式が好ましい集団の発症率0.56%に比べ有意に高かった。また、重み付けされた健康的な生活様式スコアと、多遺伝子性リスクスコアには、有意な相互作用は認めなかった。これは、生活様式因子と認知症の関連は、遺伝的リスクに基づいて実質的に変化しなかったことを示す。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、生活様式が好ましい集団の認知症発症率は1.13%であり、好ましくない集団の1.78%と比較して有意に低かった。
著者によれば、遺伝的リスクが高い集団では、生活様式が好ましい群は好ましくない群よりも認知症リスクが低いことが示されたと結論。
この集団の生活様式が好ましい群における認知症の絶対リスク低減率は0.65%であり、これは生活様式が原因の場合、10年間で遺伝的リスクが高い集団に属する生活様式が好ましくない121例を好ましい生活様式に改善することで、1例の認知症が予防可能であることを意味するとしている。
原著論文
https://pmc.carenet.com/?pmid=31302669&keiro=journal