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くめちゃんのつぶやき脳 No.236 ◇ダークチョコを毎日食べると認知機能が  向上!?

ダークチョコレートを毎日食べると、神経成長因子(NGF)という蛋白質が増加し認知機能も向上するという島根大学医学部環境生理学の住吉愛里氏らの研究結果が報告されたので紹介します。

しかもチョコレートの摂取を中止した後もしばらく認知機能が高い状態が維持されるという。

ただしホワイトチョコレートにはこの効果はないとのことだ。  この研究は島根大学の健康な学生20人(20~31歳、男性14人)を対象に行われた(介入中に2人が脱落)。

全体を無作為に2群に分け、1群にはカカオパウダーを含むダークチョコレート(24.0g/日)、別の1群にはカカオを含んでいないホワイトチョコレート(24.5g/日)を支給し、30日間毎日食べてもらった。

この間、カフェイン入り飲料は1日3杯までとし、支給したもの以外のチョコレートの摂取を禁止した。認知機能および血中NGF濃度は、連日摂取の介入前、介入終了時、そしてカカオ成分であるテオブロミンの血中濃度が通常レベルに戻ると考えられる介入終了から3週間経過した時点の計3回、計測した。  認知機能は以下の2つの方法で判定した。

テスト1は、赤、黄、青、緑という文字が4色の異なる色(赤、黄、青、緑)で印字されたもの(文字の色と文字の読みは無関係)を見て、文字の読みまたは色を瞬時に答えるというもの。

テスト2は、無作為に並んでいる0~9の数字の中から、指示された数字だけを時間内にできるだけ多くチェックするというもので、1分間の休憩を挟み3回繰り返した。  これらの測定結果を時系列で見ると、まず、介入前の認知機能と血中NGF濃度は両群同等だった。その後30日間の介入期間中、チョコレートの摂取やカフェイン入り飲料の摂取制限は、両群ともによく守られており群間差がなかった。  次に、介入終了時にダークチョコレート群ではNGF濃度が有意に上昇していることが確認された(P=0.0059)。

そして、テスト1の文字読みの正答数が有意に増加していた(P=0.017)。またテスト2では3回目のトライの正答率が有意に向上していた(P=0.014)。と

ころがその一方、ホワイトチョコレート群ではいずれも有意な変化がなかった。  続いて介入終了から3週間後の結果だが、ダークチョコレート群ではNGF濃度は介入前のレベルに戻っていた。

しかし、認知機能は引き続き有意に高い状態に維持されていた。

なお、テスト1の文字の色読みの正答数は、ダークチョコレート群では介入前より有意に増加していた(P=0.012。ホワイトチョコレート群はP=0.050)。

この他、同時に検討されたテオブロミン濃度はダークチョコレート群の介入期間のみ、血中レベルが有意に高かった

血中カフェイン濃度、脳由来神経栄養因子(BDNF)、前頭前野血流量は、両群ともに有意な変化は見られなかった。  これらの結果について著者らは、「ダークチョコレートの連日摂取によって、血中NGFとテオブロミンのレベルが上昇し、認知機能の向上が認められた」とまとめるとともに、「連続摂取が終了しNGF、テオブロミンレベルが介入前値に戻った後も、認知機能の高い状態が継続していたことは興味深く、分子メカニズムの検討が必要」としている。

*コメント

神経成長因子(NGF)や脳由来神経栄養因子(BDNF)およびテオブロミンは、いずれも私が若いころ単離した海馬神経細胞をつかって研究対象にしていた物質です。ダークチョコレートで血中濃度が高まるというのは興味深い結果です。1月25日に開催した公開講座ではカマンベールチーズでも効果があることを紹介しましたが、認知症対策の研究が盛んにおこなわれていますので今後の成果が期待されます。

テオブロミンは、私の博士論文でも研究成果をまとめていますが、カフェインによく似た化学 構造を有するカカオ豆に特有のアルカロイド成 分です。苦味と香りのもとになっています。 この苦味のもととなっているテオブロミンが、 癒しに関係する脳内ホルモンであるセロトニン を増加させることで、リラックス感が得られる と考えられています。カフェインに比べて効果 がおだやかなため、興奮作用も少ないのが特徴 です。 また、毛細血管を刺激して全身の血流を促す ため、冷え性改善作用も期待されています。

原著論文はこちら

Sumiyoshi E, et al. Nutrients. 2019; 11 pii: E2800.

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