くめちゃんのつぶやき脳 No.209 ◇老化細胞を除去して病気を治す未来が来る?
細胞の老化が、がんをはじめとするさまざまな疾患の「根本的な原因」であることがわかってきた。
20年来この研究を続けてきている新潟大学循環器内科の南野 徹教授の、老化細胞を除去する治療法の可能性について興味深いコメントがありますので紹介します。
先生は細胞そのものの老化のメカニズムがわかれば、循環器疾患を根本的に防げる可能性があるのではないかと考え、20年ほど前から、細胞の老化の研究を行っています。
研究の当初は、循環器の領域でそうした研究をしている医師はほとんどいない状況でしたが、その後、細胞の老化の研究が進み、徐々に循環器内科の研究者が増えてきているとのこと。
先生がその研究を始めたのは、細胞のテロメアの長さが寿命に関わっており、テロメアーゼという酵素にテロメアを伸ばす働きがあるということがわかり始めたころです。
その後、循環器関連では、たとえば、血圧が高い人はテロメアが短い、動脈硬化が進んでいる人はテロメアが短い、などいろいろなことが医学的に証明されてきています。
今、この領域での一番のトピックは、老化した細胞を取り除くことで、病気を治療できるのではないか、という考え方にあります。
テロメアの長さや細胞の老化は、バイオマーカーとしては臨床でも少しずつ使われてきていますが、それをもう一歩進めたものです。
細胞は普通50回くらい分裂するのですが、テロメアが短くなったり、細胞が老化したりすると、分裂できなくなります。
細胞の老化は、テロメアの短縮だけでなく、紫外線や酸化ストレスなど外的要因で染色体に傷が入ることでも進みます。
そして、そうした老化した細胞は一般にがん化しやすく、溜まっている場所によって、心不全、糖尿病などほかの疾患の原因にもなり得るのです。
つまり、抗がん剤治療のように、老化した細胞だけを標的にして殺す薬剤ができれば、がんをはじめとする疾患を予防できたり、治療したりすることができると考えられます。
老化細胞除去薬の開発は、まだ動物実験の段階ですが、一部で臨床試験が始まっていて、そう遠くない将来、さまざまな疾患で臨床応用される可能性が高いと思っていますと。
循環器領域に限れば、たとえば、運動の効果なども一つのトピックです。
適度な運動が循環器疾患の予防になるというのは常識ですが、それが細胞レベルでどのような機序で起こるのか、実は正確にはわかっていない。
最近いくつかの研究で、運動すると筋肉からさまざまな物質が出ることがわかってきて、それらが体をめぐって細胞の老化を遅らせていると考えられるようになっています。
理論的には、そのような物質を薬物として投与すれば、運動しなくても運動したのと同様の効果を体に与えることができるかもしれなということです。