くめちゃんのつぶやき脳 No.204 健康に良い食事とは? エビデンスからみた「身体によい食品」の見極め方②
◇食品を健康に良いかどうかで5つに分類すると…
カリフォルニア大学ロサンゼルス校内科学 津川津川友介助教授が作成した食品を健康に良いかどうかで分類した図を引用しました。
グループ(1)と(5)はメタアナリシスによって健康に良い悪いが明らかになっているもの。
(2)と(4)は少数の研究はあるが、健康に良い悪いは確定的には言えない食品。
(3)はメリットもデメリットも報告されていない食品です
これを見ると、現段階で健康に良い悪いが明らかになっている食品はわずかだということが分かる。
ということは、私たちはグループ(1)だけを食べるようにすればいいのだろうか?
そうではありません。何を食べるかを選択するときに、この事実を判断材料にしてほしいということです。
例えば、赤い肉は健康に悪いと考えられていますが、ステーキを食べると幸せになれるなら、幸福度と健康を天秤にかけて、たまにはステーキを食べるという選択もありでしょう。
自分の意思で選択したのであれば、病気になっても納得できるかもしれません。
しかし、事実を知らないまま、知らず知らずに病気になってしまうのは不幸だと思います。
正しい知識を得て、健康になるか病気になるかを自分で選択する力を持つことが大切なのです。
私が伝えている「経皮毒」の情報も全く同じです。正しい情報を知ったうえでどのような行動を選択するかは個人の価値観、健康観によっておおきくことなります。
さて、前回の3つのクイズの解説をしていきます。
まずは、設問(1)炭水化物について。
炭水化物は健康に良いという研究と悪いという研究がたくさんあります。
なぜそうなるかというと、多くの研究が、白い炭水化物と茶色い炭水化物を区別せずに評価しているからです。
白い炭水化物は糖尿病のリスクや心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めますが、茶色い炭水化物は死亡率、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病のリスクを下げると報告されています。
また、茶色い炭水化物は、やせる、大腸がんのリスクを下げるという研究結果もあります。
白い炭水化物とは精製した白米や小麦粉などで、茶色い炭水化物とは穀類を精製していない玄米、全粒粉、雑穀、そばなどだ。白と茶色では体に与える影響が逆なのです。
白米と糖尿病には関係があるとされています。
日本人の研究(*1)では、男性では、1日のご飯の量が316~420gのグループは、315g以下のグループに比べ、5年以内に糖尿病になるリスクが24%高くなり、それ以上増えてもあまり変わりませんでした。一方、女性の場合、ご飯の量と糖尿病リスクの関係はもっとシンプルで、白いご飯を食べる量が増えるほど糖尿病のリスクが高くなります。
*1 Nanri A,et al.Am J Clin Nutr. 2010: 92(6):1468-77.
茶碗1杯150~160gとすると、1日2杯くらいから糖尿病のリスクが上がり始めると考えてよさそうです。皆さんが想像しているよりも少ない量から、糖尿病のリスクが上がり始めるということが分かります。
また、茶色い炭水化物は健康に良いとは言っても、がんについては、リスクを下げることがはっきりしているのは大腸がんだけで、乳がんや胃がんなど、他のがんについては分かっていません。
全ての病気のリスクを下げる食品はあまりなく、「〇〇にはいいけど、〇〇にはそれほどよくない』」というものがほとんどです。
ですから、何にでもいいという情報は疑いの目で見たほうがいいということです。
次に設問(2)のステーキ。ステーキはたんぱく質が豊富なうえ、揚げたりしていないためヘルシーな感じがするが、2015年、WHO(世界保健機関)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)が、「加工肉は発がん性があり、赤い肉はおそらく発がん性がある」と発表しています。
加工肉とはハム、ソーセージ、ベーコンなど、赤い肉とは牛、豚、羊、馬などの肉だ。赤い肉は一般に脂が少ないという意味で使われる「赤身の肉」とは意味が異なり、見た目が赤い肉を指すため、霜降り肉も含まれる。
一方、鶏肉は白い肉とされ、赤い肉には含まれないため、動物性たんぱく源としては鶏肉や魚をとるといいということになります。
赤い肉は動脈硬化や大腸がんのリスクを上げることが分かっています。
以下は、日本人の研究ですが、女性では、赤い肉を最も多く食べるグループは、最も少ないグループに比べて48%結腸がんになる確率が高かった。
男性は統計的に有意ではなかったものの、赤い肉を多く食べるほど結腸がんのリスクが高くなる傾向が見られました(*2)。
赤い肉を多く食べている人は太るという観察研究もあります。
*2 Takachi R,et al.Asia Pac J Clin Nutr. 2011;20(4):603-12.
最後は豆類です。
大豆は日本では昔から健康にいいと言われていますが、大豆を含む豆類は血圧、コレステロール、中性脂肪、血糖値を下げるというメタアナリシスがあります。
がんについては、乳がん、大腸がん、前立腺がんのリスクを下げる可能性が報告されていますが、あまり研究は多くなく、まだはっきりとは分かっていません。
大豆や豆腐を食べていた人はやせていたという観察研究もあります。
つまり、健康に悪いことが明らかな赤い肉の代わりに、大豆製品を食べるという手もあるわけです。
私たちは1日3回何を食べるか選択します。
毎日の小さな積み重ねが、確実にあなたを病気から遠ざけたり、近づけたりしています。
食事に関する正しい知識を持ち、もう一段上の健康を手に入れていきたいものです。
それには偏りのない正しい情報を知ること、学ぶことが大切になります。
まずは、賢い消費者になること、それが自分と身近な大切な家族を守ることにつながります。