くめちゃんのつぶやき脳 No.203 健康に良い食事とは? エビデンスからみた「からだによい食品」の見極め方①
現代は「健康に良い食事」に関する情報があふれています。中には誤った情報や根拠が希薄な情報も多くあります。
そこで、健康情報に接するとき、どんな点に注目すればいいのだろうか、日々の健康ライフに役立てていただくための原則を2回に分けてお伝えします。
◇最強のエビデンスは「メタアナリシス」にある
では、皆様に質問です。
まずそれぞれについて、正解か不正解かを考えてください。
(1)炭水化物は健康に悪く、食べると太る
(2)ステーキは健康に良く、食べても太らない
(3)大豆などの豆類は健康に良い
正解は以下の通りです。
(1)不正解
(2)不正解
(3)正解
糖質制限ブームなので、(1)は正解と思った人が多いのではないでしょうか。
(2)は悩んだ人が多いかもしれませんね。
(3)は正解と答えた人が多いだろうと思います (それぞれの答えの解説は次回からお伝えしていきます)。
近年、ちまたには食と健康に関する情報があふれている。
「この前は〇〇を食べると体に悪い、と言っていたのに、きょうは良いと言っている」ということも少なくありません。
私の「食と脳」の講座でも健康情報は日々変化するということをお伝えしてきたところです。
私たちは一体、何を信じればいいのだろう、どうしたらよいのかと迷われる方もいらっしゃることでしょう。
情報に惑わされないためには、エビデンス(科学的根拠)のレベルを見極めることが一番大切なことになります。
最も信頼度が低いのは、個人の経験談や専門家の経験に基づく意見。現在、巷に流れる情報の多くを占めています。
その上が観察研究です。
さらに、その上がランダム化比較試験、最も信頼度が高いのが
メタアナリシスといわれるものです。
個人の経験談の信頼度が低いことは分かるが、専門家の経験に基づく意見の信頼度も低いとは、意外に思った人もいるのではないだろうか。
しかし、専門家による「何万人の患者さんを診ました。私の経験上これがすごくうまくいくんです」という意見は大事な情報ではありますが、その人たちがうまくいったからといって、ほかの人もうまくいくとは限りません。
うまくいかなかった患者さんたちは病院やクリニックを変えているかもしれませんし、そもそもうまくいきそうな患者さんだけ選んで診療しているかもしれないからです。
一方、多数の人を対象にした客観的な研究から導き出した健康情報を実践すれば、健康で長生きできる確率は高くなると考えられます。
「観察研究」というのは、食事に関するデータを集めてきて、特定の食品をたくさん食べているグループとあまり食べていないグループを見つけ、その後の病気や死亡の割合を評価するもの。
この研究には、対象になった食品以外の食品の影響や運動習慣、喫煙習慣など、他の要素が絡んでくるため、本当の効果が分かりにくい、という問題点があります。
その上の「ランダム化比較試験」というのは、薬の効果を評価するときなどに使われる手法。
集団をくじ引きなどで無作為(ランダム)に2つに分け、一方は薬を、もう一方は偽薬(小麦粉や砂糖などで作った薬そっくりなもの)を飲み、その後の健康状態を追跡して調べる。観察研究よりも正確に効果を評価することができる。
私も臨床試験で何度も使用してきた、医薬品の臨床効果を見極めるための国際的に統一された試験方法です。
「メタアナリシス」は、複数の観察研究やランダム化比較試験を取りまとめた研究。
1つの研究だけなら、特定の国民や集団にしか認められないパターンだったかもしれませんが、10個、20個の研究結果が同じであれば、それはかなり信頼性が高いことになります。
「この食品が体に良い」といった情報を目にするとき、それがどんな根拠に基づく情報なのか・・
―個人や専門家の経験談に基づくものなのか・・
何らかの研究に基づく場合、それはどんな研究なのか・・
ということに注目すれば、その情報の信頼度を見極める目安になります。
続く