くめちゃんのつぶやき脳 No.179 ◇“幸せ感”を持ち続けることが究極のアンチエイジング
人生100歳時代を迎え、死ぬまで「幸福に生きたい」といういわゆる幸福寿命を延ばすことが、新たなアンチエイジングの考え方になってきました。
今回、去る6月14日から16日、横浜で開催された第19回日本抗加齢医学界総会で会長を務められた、慶應義塾大学医学部の伊藤裕教授の大会でのメッセージが心に残りましたので要旨をご紹介します。
これまでアンチエイジングというと、どうしても見た目を若く見せるために、シワをなくすとか、シミをとる、といった小手先の医療をイメージしがちでした。
もちろんそれも抗加齢医学の一部ですが、人生100年時代と言われるようになり、もっと本質的な抗加齢というものを提唱していかなくはならないタイミングにきている。
これまでのアンチエイジングの発想を変えて、ある意味、医学の一分野という枠を越えて、心身だけでなく、環境や社会全体をアンチエイジングという観点から捉え直していくことが大切。
「幸福寿命」とは何なのか?
たとえば、100歳まで生きた人に「幸せですか」と尋ねると、皆さん「幸せです」と答える。
でも、それは100歳まで生きられたから幸せ、という結果ではなく、ずっと幸せだったから、100歳まで生きられた、という過程の話だと感じます。
つまり、健康で長生きするには、常に“幸せ感”を持ち続けていることが重要であって、それこそが究極のアンチエイジングだと。
では、どうしたら、幸せ感を持ち続けられるのか?ということなりますが、そのカギは「あいだ」にあります。
自分一人で幸せを感じることはなかなかできません。
ほかの人との間。
夫婦、家族、職場、地域、いろいろな場面での人と人の「あいだ」こそが、幸せ感を醸成するのです。
もう少し医学的な話をしますと、最近、腸内細菌叢が抗加齢に関係しているということが科学的にわかっていますが、これも「あいだ」なのです。
細菌はわれわれの腸の中にすんでいるわけで、彼らとわれわれは共生関係にある。いわばペットを飼っているようなものです。
ペットを飼っている人が、ペットをかわいがっているとき、飼い主は幸せを感じているのではないでしょうか。
ストレスが和らいで、柔らかな、いい気分になっていると思いませんか?
そういうときは、実際、“幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシンが脳から分泌されているわけです。
腸内細菌も同じです。腸内細菌をかわいがってあげればいいんです。
ペットにするのと同じように、腸内細菌が喜ぶようなことをする。
具体的に言えば、彼らが好きな食物繊維をたくさん取る、
いつも同じものでは飽きるでしょうから、バラエティーに富んだ食材を食べる、バランスよく規則正しく食事を取る、といったことです。
すると、彼らはホルモンやサイトカインを介してわれわれが幸せを感じるように働きかけてくれるのです。
幸せを感じるメカニズムも、そういうふうに物質レベルで科学的に説明できるようになってきています。
幸せに生きるために、脳が欲する食と栄養の摂り方、そして良好な人間関係をつくることが幸福寿命を延ばすという。
これは、まさに今私が脳科学的栄養学で伝えていることと同じです。
また、昨年からのブレインバランスコントロールの公開講座で毎回メッセージしてきたことは、よりよい人間関係をつくるための脳の使い方でした。
つまり、脳科学的栄養学で提唱していることは新たな時代のアンチエイジングの考え方なのです。
そのことを学会を通じて確信したところです。