くめちゃんのつぶやき脳 No.170 ◇ナッツを毎日食べる人ほど健康長寿!?
ナッツ摂取頻度が多い人ほど、総死亡やがんなど特異的死亡リスクが低くなるということが、大規模コホート試験で明らかになった。
これは米国・ハーバードメディカルスクールのYing Bao氏らが、米国の看護師健康調査(1980~2010年)と医療従事者追跡調査(1986~2010年)の参加者約12万人について行った試験報告で明らかになったもの。
これまでの研究で、ナッツ摂取量が多い人ほど、心血管疾患や2型糖尿病など主要な慢性疾患リスクが低くなることは知られていたが、死亡リスクとの関連は不明だった。
研究グループは、看護師健康調査参加者の女性7万6,464人と、医療従事者追跡調査参加者の男性4万2,498人を対象に、ナッツ摂取頻度と総死亡率と原因別死亡率の関連について分析を行った。 ナッツ摂取頻度については、ベースライン時、追跡期間中2~4年ごとに評価を行った。なお、がんや心臓病、脳卒中の病歴のある人は除外した。 延べ追跡期間は303万8,853人年だった。その間に死亡した女性は1万6,200人、男性は1万1,229人だった。
死亡リスク、非摂取に比べ週7回摂取の人は約20%減
既知または疑われたリスク因子について補正を行った後、ナッツ摂取頻度と総死亡率には、男女共に、逆相関の関連性が認められた。 具体的には、ナッツ摂取の、非摂取に対する総死亡に関するデータの比較から、週1回未満摂取、週1回摂取、週2~4回摂取、週5~6回摂取、週7回以上摂取と、摂取頻度が高いほど死亡リスクが減少する傾向が認められた。 また、ナッツ摂取頻度とがん死亡(週1回未満摂取、週7回以上摂取)、心臓病死亡、呼吸器疾患による死亡についても、いずれも有意な逆相関の関連が認められた。
原著論文はこちら
Bao Y et al. Association of nut consumption with total and cause-specific mortality. N Engl J Med. 2013 Nov 21;369(21):2001-11.
今回の結果について考察してみます
アーモンド、ピーナッツ、栗、クルミ、落花生などのナッツ類は、不飽和脂肪が豊富で、かつカリウム、マグネシウム、カルシウムといったミネラル、それにビタミンも多く含まれる栄養価の高い食べ物であることは周知のとおりです。 事実、血管内皮細胞機能の改善やインスリン抵抗性を改善するという報告もある。
本論文はナースヘルス追跡研究という約7万6,000人の女性を対象とした追跡調査と、ヘルスプロフェッショナル研究という約4万2,000人の男性を対象とした追跡研究という2つの大規模な疫学研究をまとめた結果で、ナッツ消費量多いほど死亡率が少ないという結論を示した。 ナッツを多く食べる人は、摂取量が少ない人にくらべて、ビタミン剤や果物、野菜の摂取が多く、かつ肥満が少なく、活動量も多いなどの交絡因子が数多くあるが、これらの因子で補正してもなお、死亡率は少ないという結果であった。
また不健康な人、慢性疾患のある人はナッツなどは食べることができないといった因果の逆転もありうるが、本試験では悪性腫瘍や心疾患を有する例は試験参入から除外しているという。 ナッツはカロリー価が高いために、肥満を恐れて避ける人もいるが、本研究での結果は意外にも、ナッツ消費量の多い人ではむしろ体重は減少していたという。 DASH食*はカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルを多く摂り、飽和脂肪酸接収を減らすことで高血圧を予防することが知られているが、ナッツはそれと類似の効果があると考えられる。
ただし今回の試験では塩分の摂取量は調査されておらず、テレビをみながら塩ピーナッツにビールの効果には言及していない。
*ダッシュダイエット(DASH diet、Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、アメリカ合衆国保健福祉省のアメリカ国立衛生研究所に属する国立心肺血液研究所(NHLBI)が、高血圧を予防し治療するために考案し、推奨している食事法のこと。
ダッシュダイエットでは、果物、野菜、全粒穀物、無脂肪または低脂肪の乳製品、魚、家禽、豆、ナッツ、および植物油を充分に摂取する。制限するのは食塩、砂糖で甘くした食品や飲料、獣肉の脂身、全脂肪乳製品、ココナッツオイル、パーム核油、パーム油などの熱帯油など、飽和脂肪が多い食品である。