くめちゃんのつぶやき脳 No.168 ◇横断中の歩きスマホがもたらすリスク
真面目なのに面白い、そんな医学論文をみつけました(^_-)-☆
今はもう、はやっていないのかもしれませんが、一時期「ポケモンGO」がものすごく流行しましたよね。社会現象になったくらい。街中にスマホを持ってウロウロしている人がたくさんいたのを覚えていますか。
Chen PL, et al. Pedestrian smartphone overuse and inattentional blindness: an observational study in Taipei, Taiwan. BMC Public Health. 2018;18:1342.
この台湾の研究を最初読んだとき、歩きスマホで失明するのかと勘違いしそうになったのですが、タイトルにある非注意性盲目(inattentional blindness)というのは、無意識のうちに選んだ対象に注意を向ける際、その周囲で起こっている事象が背景化してしまい、記憶に残りにくいという現象のことを指すようです。
マジックやイリュージョンでよく使われる現象です。
この研究は、台北市において、スマホにおける通話、音楽、テキストメッセージのやりとり、ゲーム、ネットサーフィンといった行動が、スマホの過剰使用と歩行者の非注意性盲目に与える影響を調べたものです。
Wi-Fiカメラを用いて、歩行者が信号を横断するときにスマホを使っていたかどうかを判断しました。
横断した後、個々にインタビューを行い、気が散っていたか散っていなかったかの2群に分類されました。
さて、どうやってそれを判定したかというと、横断歩道の反対側からピエロがスマホを持ち、そこからそれなりの音量の国歌を流して渡っていたので、普通ならば気付くでしょう、ということです。
スマホに没入していると、ピエロには気付かないですよね。また、赤信号になっている間、歩行できる残り時間が表示されるのですが、渡り切ったときに「どのくらい時間が残っていたか」についても尋ねました。
地道な作業が続けられ、なんと合計2,556人の歩行者のデータが集まりました。
このうち、横断する前の歩道を歩いていた時点からインタビューするまでの間、スマホを触っていたのは2,215人で、横断している最中も触っていたのは約半数の1,112人に上ります。恐ろしい。
判明したのは、調査当時に大流行していたポケモンGOのユーザーの非注意性盲目が顕著であったことです。
ロジスティック回帰モデルで非注意性盲目の関連を調べると、ほかに独立リスク因子として記載されているのは、スマホの画面が大きいこと、データ使用制限がないスマホ、学生であること、でした。音楽を聴きながら横断していたなら国歌が聴こえないのはわかりますが、ゲームに熱中してピエロが国歌を流していたことがわからない集団がいるというのも怖い話です。
何を言わんとしているかというと、とくに道路を横断しているときは歩きスマホは注意しましょうということです。