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くめちゃんのつぶやき脳 No.166 ◇認知症への運動不足の影響、発症前10年から?

運動不足が認知症発症路リスクを高めると考えられてきていますが、こほど認知症発症前の10年間の運動不足は発症と関連があり、10年以上前では関連なしとする研究報告が発表されましたので概略を紹介します。

フィンランド・ヘルシンキ大学のMika KivimakiらIPD-Work consortiumは、運動不足はあらゆる原因による認知症およびアルツハイマー病との関連はないのに対し、心血管代謝疾患を発症した集団では、運動不足により認知症リスクがある程度高い状態(1.3倍)にあることを示した。

無作為化対照比較試験では、運動による認知症の予防および遅延のエビデンスは得られていない。

一方、観察コホート研究の多くはフォローアップ期間が短いため、認知症の発症前(前駆期)段階における身体活動性の低下に起因するバイアスの影響があり、運動不足関連の認知症リスクが過大評価されている可能性があるという。

研究グループは運動不足は認知症のリスク因子であるかどうかを検討するため、19件の前向き研究で運動不足と認知症発症の因果関係を解析

その結果運動不足は、発症前10年では関連があるが、10年以上前では関連性は認められなかったと報告している。

 認知症がなく、登録時に運動の評価が行われた40万4,840例(平均年齢45.5歳、女性57.7%、運動不足16万4,026例、活発な身体活動24万814例)について、電子カルテの記録で心血管代謝疾患および認知症の発症状況を調査した。認知症の平均フォローアップ期間は14.9年(範囲:9.2~21.6)だった。

 600万人年当たり、2,044例が全認知症を発症した。認知症のサブタイプのデータを用いた研究では、アルツハイマー病は520万人年当たり1,602例に認められた。

認知症診断前の10年間(認知症の発症前段階)の運動不足は、全認知症およびアルツハイマー病の発症と有意な関連が認められた。

一方、認知症発症の10年以上前の身体活動を評価したところ、活動的な集団と運動不足の集団に、認知症リスクの差はみられなかったとのこと

これらの傾向は、年齢別(60歳未満、60歳以上)および性別(男性、女性)の解析でも同様に認められた。

また、認知症発症の10年以上前の運動不足は、糖尿病、冠動脈性心疾患および脳卒中の新規発症リスクの上昇と関連し、診断前10年間では、これらのリスクはさらに高くなった。

認知症に先立って心血管代謝疾患がみられた集団では、運動不足の集団は認知症のリスクが過度な傾向がみられたものの、有意ではなかった。

心血管代謝疾患がみられない認知症では、運動不足と認知症に関連はなかった。

 著者は、「これらの知見は、運動不足を対象とする介入戦略だけでは、認知症の予防効果には限界があることを示唆する」としている。

つまり、認知症の予防効果としての運動の効果が従来期待されてきましたが、過大評価のきらいがありそれには限界があるとのことを示している。

運動不足が認知症発症の直接的な原因というより、運動不足が誘発する血管疾患などの循環系や他の疾患の発症による、二次的な関連があると思われます。

この報告は、認知症の予防としての運動効果を否定しているものではないが、「運動不足だと認知症になる」とする短絡的な考えはしないようにしましょう。

原著論文はこちら

Kivimaki M, et al. BMJ. 2019;365:l1495.

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