くめちゃんのつぶやき脳 No.135 ◇母親の体格がADHD、自閉症リスクと関連か?
前回に続いてADHDの研究報告を紹介します
ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)のリスクは、妊娠前の母親の肥満などの環境的要因の影響を受ける可能性が指摘されています。
しかし、これらの関連を調査したこれまでの研究では、必ずしも見解は一致しとりません。異なる結果が得られているのも事実。
デンマーク・オーフス大学病院のChristina Hebsgaard Andersenらは、これらの関連をさらに調査するためADHD、ASDおよびADHDとASDが併存した小児における大規模出生コホートを行って、その結果を報告しています。 対象は、デンマーク国民出生コホート(DNBC:Danish National Birth Cohort)に参加している母子8万1,892人。妊娠前の体重および身長に関する情報は、妊娠16週目に収集し、BMIに基づき分類し、分析した。
ADHD、ASDまたは併存の臨床診断を受けた小児は、デンマークヘルスレジストリにおいて平均年齢13.3歳で確認された。ハザード比(HR)*は、時間事象分析(time-to-event analysis)を用いて推定した。
*ハザード比(HR)とは、統計学上の用語で、臨床試験などで使用する相対的な危険度を客観的に比較する方法です。詳細な解説は省きますが数字が1より小さくなるほどリスクは低くなります。また、1より数字が大きくなるほどリスクは大きくなります。
主な結果は以下のとおり。 ・正常体重の母親と比較し、過体重(HR:1.28、95%CI:1.15~1.48)、肥満(HR:1.47、95%CI:1.26~1.71)、重度の肥満(HR:1.95、95%CI:1.58~2.40)の母親は、ADHD児を有するリスクが有意に増加した。
・ADHDとASDが併存した患者でも、同様なパターンが認められた。
・ASDに関しては、低体重(HR:1.30、95%CI:1.01~1.69)および肥満(HR:1.39、95%CI:1.11~1.75)の母親で、リスク増加が認められた。
・サブグループ解析では、ADHDにおける関連は、主に過活動グループに起因する可能性があることが明らかとなった。 著者らは「妊娠前の母親の肥満は、小児ADHDの危険因子である。また、母親の肥満および低体重は、ASDリスク増加と関連している可能性がある」としている。
原著論文はこちら
Andersen CH, et al. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2017 Jul 15. [Epub ahead of print]