くめちゃんのつぶやき脳No.124
◇小児期のストレスと将来の認知症発症との関連
悲惨な幼児への虐待のニュースが毎日にようにニュースになっていますが、幼児期・小児期における精神的、肉体的ストレスがその後の人生だけではなく、重大な疾患の引き金にもなるという研究報告がありましたのでご紹介します。
小児期の環境と晩年の慢性疾患との関連を分析する長期の研究は、これまであまり行われていない。とくに、認知症の早期予測を可能とする研究はほとんど存在しない。
東フィンランド大学のGwendolyn A. R. Donleyらのグループは、小児期のストレスと将来の認知症(とくにアルツハイマー病)との関連について検討を行った。
1984~89年に実施された広範なベースライン健康診断およびインタビュー調査に参加した、当時42~61歳の男性2,682例のデータを使用。
これらの網羅されたインタビュー調査には、小児期の出来事が記録されていた。
保護施設や児童養護施設での生活、小児期の危機的な経験、教師による問題、戦争による移住など、複合的な小児ストレス変数を作成。
ADを含む認知症に関するデータは、2014年までの健康レジストリより取得した。
認知症発症リスクは、ベースライン時の年齢、教育、所得、先天性疾患の既往で調整し推定した。 主な結果は以下のとおり。 ・小児期のストレスと、認知症リスクの増加とは高い関連性が認められた。
・年齢、教育、所得およびその他の共変量で調整した後でも、この小児期のストレスと 認知症発症リスクとの関連は統計学的に有意であった。
・この関連は、アルツハイマー病においてもわずかに有意であった。 著者らは「小児期のストレスは、男性において、将来の認知症リスクに重要な影響を及ぼす。
そのため、ストレス状態に苦しんでいる小児に対しての、支援システムの開発が求められる。
多様な集団において、将来の罹患率に関わる小児期の社会的および環境的影響を検討するさらなる調査は、ライフコースの疾患による負荷を理解するために必要である」としている。
私が提唱する「脳科学的栄養学」では、
①いじめや差別、虐待などの内因性の遠因として、胎児期における脳神経系、生殖系、免疫系の遺伝子発現時に母体を介して環境化学物質に曝露されたことは関与していると考えている。その後の人生に大きな影響を与えていくことになる。
しかし、
②外因性要因である脳の正常活動に必要な栄養・食の摂り方と
③脳の本能や基本的欲求を満たすために、本人も含めて周囲の良好な人間関係を構築することで、障害として発症することを予防できるのです。
今回の報告は「脳科学的栄養学」で伝えている意味と意義の大きさを再度確認する
ものとなりました。
日本でもエコチル調査が進んでいるところですが、一日も早い結論と化対策が取られることを願わずにはいられない。
原著論文はこちら
Donley GAR, et al. Eur J Public Health. 2018 Jul 17. [Epub ahead of print]