くめちゃんのつぶやき脳 No.104 ◇超加工食品摂取割合の増加はがんリスクを高める可能性が大!
超加工食品とがんの関係にスポットライトを当てたインパクトの大きい論文がありましたので、紹介と私見をコメントします。
私達人類は、歴史的には食物を糧にして生命維持に必要なエネルギーを元来、狩猟民として肉食または雑食により生きてきました。
やがて、農耕の定着により安定して食物を得ることが可能になったため、炭水化物(糖質+食物線維)からより多くのエネルギーを取り入れる現代の生活様式を確立した。
主に糖質による摂取エネルギーの過剰および交通手段の発達に伴う運動量の減少影響も加わり、肥満を招き生活習慣病の増加に拍車がかかっている。
さらに、先進国においては夫婦共働きの家庭が増加する社会の中で、加工食品からのエネルギーの摂取増加が、その利便性のために増え続けている。
その一方で、保存期間の延長、見ためをよくするなどの目的で、食品添加物、安定剤、発色剤、防腐剤、砂糖、油脂、塩などが添加されている。
このような食品加工技術の進歩の裏で、食の安全性が損なわれていることを決して忘れてはならない。
これは2018年2月14日にBMJ誌に掲載されたインパクトのある論文です。
本研究の要約
フランスのNutriNet-Santeコホート1)(2009~17年)からの18歳以上(年齢中央値42.8歳)の10万4,980人が本研究の対象。
食事摂取量は24時間の食事記録データを繰り返し集め、参加者の日常の食品消費量が3,300種の異なる食品に登録できるように計画された。
これらのデータはNOVA分類2)による加工の程度に基づいて分類が行われた。 超加工食品とがんリスク関連は、既知のリスクで調整し解析。
本大規模前向きコホート研究により、食物中の超加工食品の割合が10%増加すると、全がんリスクが12%、乳がんリスクが11%増加した。
前立腺がん、大腸がんとの関連性は確認できなかったが、全体的に加工食品の摂取割合の増加は、がんの高リスクに関連していることが明らかになった。
しかしながら、本研究には対象の選択バイアス、超加工食品の誤分類の可能性、追跡調査期間が比較的短いなどの不安定な要素もあり、今後さらなる検討が必要であると著者は指摘している。
さて、現代社会では食事の準備にあてる時間が限られる中で、加工食品の利便性が益々重宝されています。
このブームの中で食品加工産業が益々勢いづいてきており、食の安全性が食品加工技術の進歩の中に埋没している現実を忘れてはなりません。
また、外食産業に関しては、発展途国上においても同様の理由で、食の安全性が失われつつあることを考える必要があります。 私達は食の原点に立ち返り、食質の見直しに目を向けてみましょう。
このままですと、加工食品普及の嵐の中で、健康長寿社会の実現はつゆと消える可能性も否定できません。
私たちは進化の過程で何を食べて体をつくってきたのか、体と食の原則から自然食への回帰の重要性も改めて再認識する必要があります。
加工食品に囲まれている現代にあって、賢い食の摂り方をしなければ、やがて健康長寿ははかない夢と消えるかもしれません。
本論文は現代人の食の在り方に警鐘を鳴らす意味で、その影響力は誠に大きいが、それのみならず、食品に潜む有害物質について深く掘り下げて考える好機になることを願ってやみません。
参考文献はこちら
1)Hercberg S, et al. BMC Public Health. 2010;10:242.
2)Monteiro CA, et al. Public Health Nutr. 2018;21:5-17.