くめちゃんのつぶやき脳 No.97
◇アルツハイマー病の進行抑制に低用量アスピリンが有効か?
アスピリンを服用するとアルツハイマー病の進行を抑制できる可能性のあることが、のマウスを用いた実験で示唆されました(米ラッシュ医科大学神経学Kalipada Pahan )。
アルツハイマー病には脳内のアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質の蓄積が関与していると考えられているが、低用量アスピリンは脳内に蓄積したAβの除去に役立つ可能性があることが示されたという。
アルツハイマー病の原因はいまだ解明されていないが、毒性があるAβが脳内に蓄積してアミロイドプラークを形成することがその一因と考えられている。そのため、アルツハイマー病の進行を遅らせるための手段として、脳内のAβ除去を担う細胞機構を活性化させる方法が注目されている。 Pahan氏らはまず、マウスの脳細胞を用いた実験で、アスピリンはPPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター)αと呼ばれる遺伝子発現の調節因子を活性化することで、脳内のAβ除去に重要な調整役(マスターレギュレーター)を担う転写因子EB(TFEB)の発現量を増やし、Aβ除去に関わるリソソームの合成を高めることを突き止めた。
さらに、アルツハイマー病のモデルマウスに低用量アスピリンを1カ月にわたり経口投与して調べた結果、アスピリンはPPARαを介した作用によりアミロイドプラークの除去に働くことが分かったという。
以上の結果を踏まえ、Pahan氏は「世界で最も汎用されている一般用医薬品の一つであるアスピリンには、鎮痛や心血管疾患予防以外にもアルツハイマー病などの認知症に関連した疾患への新たな治療効果が期待できる可能性が示された」と結論づけている。
私も抗炎症薬の開発をしていたころ、低用量アスピリンが脳の炎症を抑えているのではとの知見を動物実験から得ていた経験があります。
また、抗炎症薬として低用量アスピリン(100㎎/錠)を常用している患者にはアルツハイマー発症率が低いことは専門家の間では知られているところで、自ら服用している医師も多い。
低用量アスピリン錠(日本ではバイアスピリン)は血液をサラサラにして、血栓予防を目的として医師の処方が必要とされる医療用薬ですので、市販薬としては入手することはできません。
現在、米国では65歳以上の男女の10人中1人がアルツハイマー病患者だと推定されています。
しかし、アルツハイマー病の治療薬として米食品医薬品局(FDA)に承認されている薬剤は数種類しかなく、これらの薬剤の効果も限定的なのが現状である。
日本でもほぞ同じような傾向にあるので、今後、アルツハイマー病の予防薬として低用量アスピリンが開発されることが望まれているところ。 原著論文はこちら
Chandra S, et al. J Neurosci. 2018 Jul 2. [Epub ahead of print]