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102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.539

日本の熱帯夜は死亡リスクを上昇させる

47都道府県の最低気温と死亡の関係分析結果


 最低気温が高い熱帯夜の翌日は死亡リスクが高まる!という怖い報告がありました


死亡リスクが上昇した状態は最長で3週間ほど続くことが、日本の熱帯夜と死亡の関係を検討した初めての研究(Kim SE, et al. Environ Health Perspect. 2023 May;131(5):57005.)で明らかになりました。


高い気温が健康に悪影響を及ぼすことは良く知られていまが、これまでに行われた研究のほとんどが、その日の最高気温、すなわち昼間の気温と健康の関係を調べており、夜の気温と健康の関係を調べた研究はありませんでした。


 夜の気温、すなわち、1日の最低気温が下がらないと、昼間の高温による疲労から回復できないまま翌日再び高温にさらされる可能性があります。


近年、温暖化により熱帯夜が増加していることから、熱帯夜が健康にどのような悪影響を与えるのかを筑波大学のSatbyul Estella Kim氏らは、日本人を対象に熱帯夜とその後の死亡の関係を検討しました。


 1973年から2015年までの43年間にわたる、日本の47都道府県の日々の気温のデータと死亡に関するデータを、個々の県について熱帯夜と死亡の関係を推定。熱帯夜の定義として、「4月から11月の、最低気温が25度以上だった日の夜(HN25)」、または、「4月から11月の、その時期の最低気温の95パーセンタイル以上の気温までしか下がらなかった日の夜(HN95th)」、という2通りを用意しました。


 HN25を熱帯夜とすると、北海道、岩手、青森、山形は熱帯夜が年間2日未満である一方で、沖縄や鹿児島では40日以上ありました。


HN95thを熱帯夜とすると、熱帯夜の最低気温は、北海道では21度未満で、沖縄などでは27度以上になりました。


 1日の平均気温、季節、長期的な変化傾向、曜日を考慮し、熱帯夜を経験した日から死亡が発生するまでの時間(タイムラグ)を21日間として分析。


分析対象となった期間中に、計2472万1226人が死亡していました。


日本全体では、熱帯夜でない日からの21日間に比べ、熱帯夜の後の21日間のほうが、総死亡(あらゆる原因による死亡)リスクが上昇していました(HN25後は9%上昇、HN95th後は10%上昇)(表参照)。





検討した11の死因、すなわち、心血管疾患、虚血性心疾患、脳血管疾患、脳出血、脳梗塞、呼吸器疾患、肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、腎臓病、老衰による死亡のすべてが、熱帯夜と有意に関係していました(心血管疾患:虚血性心疾患、弁膜症、不整脈など/虚血性心疾患:心筋梗塞、狭心症など/脳血管疾患:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)。


死亡リスクの上昇は2週間程度続き、6月の方が大きい


続いて、熱帯夜後に死亡リスクの上昇が持続する期間を調べました。総死亡と11の死因別死亡の多くについて、リスク上昇は熱帯夜後すぐに認められました。リスク上昇が有意になる期間が5日程度の死因もありましたが、多くの死因で10~15日持続しており、一部の疾患による死亡のリスクは、おおよそ20日後まで有意に高い状態にありました。

 死亡者を年齢別に15歳未満、15~65歳、65歳以上に分けて死亡リスクの上昇期間を比較したところ、15歳未満では3日程度しか持続していなかったのに対して、65歳以上では2週間程度と、リスク上昇期間が長くなっていました。

 熱帯夜と死亡の関係の強さは県によって異なっており、県ごとの差には各都道府県の緯度やエアコン普及率などが有意に影響していました。

 また、熱帯夜による死亡リスクの上昇は、どの県でも、夏の終わり(8月半ば)より夏の初め(6月半ば)のほうが大きいことも明らかになりました。

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