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102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.538

高齢者は熱中症になりやすい、なぜ?

◇クイズで学ぶ「高齢者の熱中症」に関する問題


猛暑の日々で熱中症で倒れる人の数が連日ニュースで流れてきます。

なかでも高齢者は熱中症にかかりやすいので注意が必要とされています。


そこで高齢者の熱中症に関する問題です。

【問題】

高齢者の熱中症に関する説明で、間違っているものは以下のうちどれでしょう?


(1)熱中症で救急搬送される人の過半数を高齢者が占めている

(2)最も多いのは屋外での作業中に熱中症になるケースである

(3)高齢者は暑さを感じにくいため、熱中症になりやすい


【解説】熱中症で搬送される人の5割強が高齢者!

今年も熱中症で搬送される人が増えてきました。

令和4年に熱中症で救急搬送された人は7万1029人で、うち高齢者は3万8725人と、約55%を占めていました(城戸千晶ら. 夏期におけるフレイル高齢者の住まい方と室内温熱環境の実態調査. 空気調和・衛生工学会 平成30年度大会(名古屋)学術講演論文集 第6巻 温熱環境評価. )


では、高齢者はどういう場所にいて熱中症になってしまうのでしょうか? 


実は、最も多いのは自宅で、ある調査では6割の人は自宅から搬送されていました(柴田祥江ら. 高齢者の夏期室内温熱環境実態と熱中症対策. 日本生気象学会雑誌 55 巻 (2018-2019) 1号 p.33-50. )。





 これまでに延べ10万人以上の高齢者と接してきた二本松眼科病院副院長の平松類先生は、その理由として「高齢者はエアコンをきちんと使っていない」ことを挙げます。


「この調査では、自宅で熱中症になった高齢者のうち、部屋の温度を熱中症になりにくい基準温度に下げていた人は2割弱しかいませんでした。

つまり、搬送された高齢者の8割以上はエアコンを使用していないか、使用していたとしても室温を十分に下げていなかったのです」と話しています。


なぜ高齢者はエアコンを使わないのか。

そこには高齢者に多い「エアコンは体に良くない」という思い込みだけでなく、医学的な理由もあります。


若いころは気温を敏感に感じることができますが、年を重ねるごとに人は気温に対して鈍感になっていきます。

ある研究では、60代では実温度と体感温度の差が0.27度、70代以上は2.55度と報告されています(岡崎和伸ら. 加齢に伴う温度感覚の減弱は全身持久力の向上で改善できるか? デサントスポーツ科学. Vol.38 p.55-63.)。


これはどういうことかというと、例えば室温が30度になっていたとしても、70代以上の人は27.45度に感じるのです。


よく、エアコンの設定温度は28度にしましょう、といわれますが、エアコンをつけなくてもその28度以下に感じているわけです。


結果として、高齢者のエアコンの使用時間は短くなってしまいます。


 さらに高齢者は、若い人よりも脱水状態に陥りやすい要因があります。

まず、食事量が若いころよりも減るので、食事から得られる水分量が減ります。


また、高齢になるほど頻尿になるので、頻回のトイレを避けるために水分を控える傾向にあります。

さらには、のどの渇き自体を感じにくくなっているので、水分をとらなくなります。


こうした医学的理由も相まって、高齢者は自宅にいるにもかかわらず、熱中症となり救急搬送されることがあるのです。


正解(間違っている説明)は、(2)最も多いのは屋外での作業中に熱中症になるケースである です。



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