102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.533
腸内環境を整える発酵性食物繊維の働き③
◇食物繊維不足は生活習慣病や死亡リスクに関係する!
食物繊維の摂取で期待できる健康効果とはどんなものでしょうか?。
従来は、食物繊維の期待できる効果としては、便通改善や大腸がん予防が一般的でした。
しかし、腸内細菌研究が2000年代に入り飛躍的に進化した結果、食物繊維摂取量と心筋梗塞や脳卒中、循環器系疾患や2型糖尿病といった生活習慣病などの予防効果も認められてきたのです。
最近では、大腸以外のがんや総死亡リスクとの相関を示す調査報告が世界各国から相次いでいる現状です。日本人を対象にした調査では、国立がん研究センターの多目的コホート「JPHC研究」からは複数のがんと食物繊維摂取量との関連を示す報告があります。
筑波大学の研究チームは、食物繊維の摂取量が少ない人は認知症発症リスクが高いと報告している。
最近、大きな注目をあつめたのが、食物繊維の摂取量ががんの治療薬の効きに影響するという報告です。
免疫チェックポイント阻害剤は、日本で開発された新世代のがん治療薬として注目される薬で、免疫細胞の働きを邪魔する抗体をブロックする働きがある*。がんが進行した患者さんでも長期生存が可能になったという例がある一方で、全く効かない人もいるという。その効きの違いがどうやら腸内細菌にありそうだという声が2015年ごろから研究者の間で上がり、腸内に影響を与える薬の投与や食習慣の影響についての調査が国内外で行われてきたのです。
2021年に米国の研究チームが、免疫チェックポイント阻害剤を使用しているがん患者の生存率と食物繊維の摂取量の調査を行ったところ、食物繊維を1日20g以上摂取している人たちは明らかに生存率が高かったと報告しています。興味深い結果で私も注目しています(グラフ参照)。
この研究論文では、生存率だけでなく、マウスを使って薬の効きについても調べています。がんを殺す免疫細胞の働きがよくなることがきちんと確認されていて、研究チームは「腫瘍を攻撃する免疫機構において、食物繊維を摂取して変わる腸内細菌叢が非常に重要な役割を担っているのではないかと、考察しています。 ヒトの体にはがん細胞を攻撃する免疫細胞が存在しますが、一方でその免疫細胞に対して働きを阻害する抗体ができてしまうこともあります。その抗体の働きを邪魔するのが免疫チェックポイント阻害剤です。
代表的なものに「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」があることが知らています。