102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.531
腸内環境を整える発酵性食物繊維の働き①
健康や長寿を語るうえで、忘れてはならないのが「腸内細菌」。
腸内環境を整える栄養素である食物繊維の働きといえば、腸の中をキレイにして、便通をよくするだけのものと思っている人も多いかもしれません。
でも、そんなふうに思っているなら時代遅れかもしれませんよ。
今回からシリーズで、腸内細菌研究が進むにつれてわかってきた食物繊維の役割とは何かを解説してきます。
◇食物繊維は、その人オリジナルの“いい腸内環境”をつくる、重要な栄養素
食物繊維の定義は各国で少しずつ異なりますが、主に「ヒトの消化酵素で消化できない難消化性“炭水化物”」を指します(下図参照)。
この「ヒトが消化できずに大腸まで届く」という点が健康に寄与する理由だと考えられます。
腸内細菌の中でも、ビフィズス菌をはじめとする有用菌は、食物繊維などの炭水化物を利用する菌です。糖をエサにするが、でんぷんなどのヒトが消化できる多糖(=糖がたくさんつながったもの)は小腸で吸収されて腸内細菌のもとまで届かない。そのため腸内細菌は、ヒトが消化できずに大腸に流れてきた食物繊維を分解してエサにし、増殖しています。
これらの菌が増えると、酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸が大腸内で増えることがわかっています。
短鎖脂肪酸は腸内を酸性にして有害な菌が増えにくい環境をつくったり、腸管の内側を覆う細胞を強くして、異物の侵入を抑える腸管バリア機能を維持することが知られています。
さらに、近年の研究では、短鎖脂肪酸がアレルギーや炎症などの過剰な免疫反応を抑制したり、脂質代謝を改善したりすることも明らかになってきました。
つまり、食物繊維をたくさんとっていると腸の中にいい菌が増え、私たちの健康に役立つ成分を作ってくれるというわけです。
食物繊維をとることによる健康効果が、この発酵によってできる短鎖脂肪酸にあると考えている研究者は多いです。
大腸内には100兆個とも1000兆個ともいわれる無数の腸内細菌がいるが、その数や種類、バランスは指紋のようにひとりひとり異なります。
そのため、便通やアレルギー症状などが改善する乳酸菌やビフィズス菌入りの食品をとってもその菌が定着してくれるわけではありません。
一時的に腸内環境を整えるにはいいのですが、長い目で見ると、その人ならではのいい腸内細菌叢を作り上げていくほうがいいのです。
そのためには食物繊維をたくさんとって、有用な菌を増やしていく必要があります。
Comments