102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.518
◇ワキガの強いニオイ! どうしてこうなるの?
クイズで学ぶワキガ
これまで、今知っておきたい健康や医療のさまざまな情報を拾い上げて、クイズ形式でお伝えしてきました。ぜひ日々のセルフケアにお役立てください!
【問題】アポクリン腺からの汗の特有なニオイが強い体質を「ワキガ」(*)と呼びます。
次のうち、ワキガの説明として間違っているのはどれでしょう。
•(1)アポクリン腺が多いとワキガになる可能性が高くなる
•(2)アポクリン腺は全身にくまなく分布している
•(3)アポクリン腺の汗は、かいたばかりのときはさほどニオイはない
•(4)ワキガの治療法は手術しかない
•
*ワキガは本来はワキの臭いを指すが、最近はほかの部位の強い体臭もワキガという場合がある
ワキガのニオイが強くなる要素は3つ
汗を分泌する汗腺には2種類あり、体温調節のためにかく汗は、ほぼ全身にある「エクリン腺」から出ます。
もう1つの汗腺は「アポクリン腺」といい、主にワキ、耳の穴、乳輪や陰部などにあり、その部分の毛にひもづいています。
エクリン腺からの汗はほぼ水分でサラサラしているのに対し、アポクリン腺からの汗はたんぱく質や脂肪などが多く含まれているため、やや白っぽく粘り気があります。
アポクリン腺にひもづく毛に粘り気のある汗が絡み付くと、毛を足場にして皮膚にすみつく雑菌(常在菌)が繁殖し、汗を分解することでニオイが生じます。このアポクリン腺からの汗の特有なニオイが強い体質をワキガといい、アポクリン腺が多いとワキガになる可能性が高くなるのです。
ワキガは、アポクリン腺は乳汁を作る乳腺と類似しているので、酸っぱいような、チーズのようなニオイがします。
少々専門的な話になりますが、アポクリン腺も乳腺も「断頭分泌」という形式で汗や乳汁を分泌しています。断頭分泌では、細胞の一部がちぎれて分泌物となるため、細胞のたんぱく質や脂肪などの成分が多く含まれます。
アポクリン腺の汗も、かいたばかりのときはさほどニオイはないのですが、汗に含まれる成分がエクリン腺の汗よりも多く、これが雑菌に分解されることで発酵した乳製品のようなニオイになるわけです。
そこで、
ワキガのニオイが強くなる要素は3つあります。
1つ目はワキのアポクリン腺の汗の分泌量、
2つ目は汗を分解する雑菌、
3つ目が雑菌が繁殖・活動しやすい環境です。
逆に、この3つの要素を改善することで、ワキガのニオイが軽減されます。
日常生活の中では、ワキの毛を処理しておく。
また、一般的には、デオドラントシートや除菌シートなどでこまめにワキの汗を拭き取る、汗の量や雑菌の繁殖を抑える制汗剤を使うといった対策が推奨されています。
但し、私の経皮毒の視点からは、こうしたものを使うのは推奨できません。
大事なことは、ワキを乾燥した清潔な状態に保つことにつきます。。
また、ワキガが気になる人は、ニオイの強い食品や、肉などの動物性のたんぱく質や脂質をとりすぎないように注意していくことも大切です。
ワキガの治療法は手術以外にもある
私は積極的には推奨しませんが、最も効果があるのは、ワキの皮膚を切開し、裏側にあるアポクリン腺そのものを除去してしまう手術です。ただ、傷痕が目立ちやすく、医師の技量によっては、ワキの皮膚がひきつれて腕が上がらなくなるといったことが起こり得ます。よく医療訴訟が起きています。
また、術後は1週間程度、安静が必要になります。
手術をしなくても、どうしてもの場合は塩化アルミニウムを主成分とするローションなどで発汗を抑えたり、雑菌を減らすような抗菌薬を使ったりする方法があります。また、多汗症治療が適用となれば、エクリン腺の発汗を抑える外用薬のエクロックゲル、ワイプ製剤のラピフォートワイプ、ボツリヌス毒素注射があります。自費診療では、マイクロ波を照射してエクリン腺・アポクリン腺を破壊するミラドライがあります。
治療を選択する際は、医師とよく相談するようにしてください。
多汗症はワキガとは厳密には関連はなく、体温調節のためのエクリン腺から分泌される汗が多い症状です。ただ、多汗症の治療でエクリン腺の汗を減らし、ワキを乾燥した状態にすることで、アポクリン腺から汗が出ても雑菌が繁殖しにくくなります。つまり、雑菌が繁殖・活動しやすい環境を変えることで、ニオイが軽減するのです。
多汗症は、汗の量が多くなる病気や障害がないにもかかわらず多量のワキ汗が6カ月以上あり、睡眠中は発汗が止まっている、日常生活に支障を来すといった一定の基準を満たすと診断されます。
正解(ワキガの説明として間違っているもの)は、
(2)アポクリン腺は全身にくまなく分布していると
(4)ワキガの治療法は手術しかない です。
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