102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.448
◇運動はまとめてやってもこまめにやっても効果は同じか?
会員の皆様は健康を維持するために毎日少しずつでも運動したいと考えている方も多いかとお思います。しかし、終日はなかなか忙しくて結局週末にしか時間が取れない…という人も多いのではないですか?。
余暇時間に行う有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など)を週3日以上行った場合と、週末に集中して行った場合では、得られる利益に差があるのでしょうか。知りたいところです。
このほど行われた研究で、運動の総量が同じであれば、何日に分けて運動しても死亡リスクの低下に差はないことが明らかになりました。
これまで、有酸素運動を週に1~2日間集中的に行った場合と、週に3日以上にわたって行った場合に、死亡リスクに及ぶ影響が異なるのかどうかは明らかではありませんでした。
そこで、ブラジル・サンパウロ連邦大学などの研究者たちは、この2つの運動パターンについて、あらゆる原因による死亡(総死亡)と、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)による死亡、がんによる死亡に対する影響を比較しています。
分析に用いたのは、1997~2013年に米国民を対象に行われた健康に関する聞き取り調査に参加した、18~84歳の35万978人(平均年齢41.4歳、50.8%が女性)のデータを抽出しました。これらの人たちの2015年12月31日までの死亡に関する情報を、全国死亡指数(NDI)から取得しました。
参加者たちは、余暇時間の有酸素運動について以下の4つの質問に回答していました(表参照)。
「低強度から中強度の運動」と「高強度の運動」は、発汗の程度、呼吸数と心拍数の増加の程度を例に示した上で、参加者自身に判別してもらいました。
1週間の運動の総量は、高強度の運動をした時間(分数)を2倍し、中強度までの運動を行った時間(分数)と合計したものとしました。たとえば、高強度の運動を週に25分、中強度までの運動を週に100分行った人の総量は、週150分となります。
運動の総量が週150分未満だった人を「不活発群」、150分以上だった人を「活発群」に分類しました。「活発」の人はさらに、1週間に運動する回数(日数)に基づいて「1~2日群」と「3日以上群」に分類しました。
35万978人を10.4年追跡したところ、2万1898人が死亡。うち4130人が心血管疾患、6034人ががんによる死亡でした。
運動習慣に関する評価では、19万80人(52.5%)が不活発群、残りの16万898人(47.5%)が活発群に分類されました。活発群のうち9992人が週に1~2日、15万906人は週に3日以上運動していました。1週間の運動時間の総量は、週に1~2日群が240分、週3日以上群は420分でした。
分析結果は、不活発群と比較した活発群の総死亡のリスクは、1~2日群ではやや低い傾向は見られたものの統計学的有意差はなく、3日以上群では有意に低下(15%)していました。
心血管疾患による死亡のリスクも、1~2日群では13%低い傾向(有意差なし)を示すにとどまりましたが、3日以上群では23%低下(有意差あり)していました。がんによる死亡のリスクも同様で、1~2日群ではやや低い傾向(有意差なし)が認められ、3日以上群では12%低下(有意差あり)していました。
結論として、運動の総量が同じ人たちを比較した分析では、両群の総死亡と心血管疾患死亡、がん死亡のリスクに有意差は見られませんでした。
つまり、運動総量が同じとすれば死亡リスクの低下は同程度になるという結論です。
この結果は、多忙な週日に無理をして時間を作らなくても、週末にまとめてしっかり運動すれば、健康利益が得られることを示唆するものといえます。
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