102歳をらくらく生きる脳科学的健康講座No.441
◇空腹時血糖値が高い、体の中で起きていることとは?⑥
「空腹時血糖」と「HbA1c」、どちらが基準値超えだとより深刻?
さて、空腹時血糖とHbA1c、どちらが悪いかで、その意味合いは異なるのだろうかを考えていきます。
まず空腹時血糖ですが、これを調べるには10時間以上食事をとらずに検査をすることが重要です。
健康な人が10時間食事をとらなければ、血中の余分なブドウ糖はグリコーゲンという固形燃料の形で肝臓に蓄えられます。
血中には必要な量のブドウ糖だけが存在することになります。
しかし、食後10時間たってもブドウ糖がたくさん残っているということは、「10時間かけてもブドウ糖を処理できないほど、インスリンが足りない」、つまり糖尿病かそれに近い状態ということになります。
インスリンという金庫(肝臓)のカギがないから、金庫を開けられず家(血中)にそのままお金(糖)が置かれているような状態をイメージしてください。
一方、HbA1cは、過去1~3カ月の間に血糖が上昇したことがあったかどうか、日常生活で血糖がだぶついていたことはなかったかを示す数値です。
「空腹時血糖は基準値内であるけれどHbA1cが高い」ということは、「10時間空腹にしておけば糖を片付けられるくらいのインスリンは出ているけれど、食べた直後にさっさと片付けられないくらいインスリン反応が弱い」ということを意味します。
インスリンの分泌量より食べる量が多すぎるか、インスリンの分泌量が減りつつあるのかもしれない。
あるいは「インスリン抵抗性」の状態が生じている、つまり、必要な量のインスリンが分泌されていても、何らかの原因によって、その効果が得られにくくなっているのかもしれません。
インスリンが効きにくくなると糖の処理が遅れ、高血糖の状態が長くなるので糖がヘモグロビンにくっつきやすくなってHbA1cは上がります。
このように、同じ糖の検査項目でも、どの結果が高いかによって示されている意味が変わります。
単に血糖の項目の高低で糖尿病かそうでないかを見るだけではなく、検査データから自分の体のどこで何がうまくいってないのかを見るのが、糖の検査結果の上手な見方です。
つまり、予防的に見る場合は、「体がしかるべき仕事をしかるべきタイミングでやってくれているかどうか」の指標として見るようにしましょう。
そういう視点で空腹時血糖とHbA1cの関係を整理すると、順番としては、最初に高くなるのがHbA1cで、空腹時血糖値が上がるのは最後です。
つまり、空腹時血糖値が上がり始めたらより深刻ということです。
空腹時血糖値が110mg/dL以上の場合は、ぜひ一度受診してください。
ただ、もちろん、HbA1cの数値だけが悪くて空腹時血糖値は基準値内だから安心ということはなく、HbA1cが一定のレベルを超えたら、生活習慣の見直しが必要となります。
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